イノベーション・キュレーター塾
Jul 13.2018

物事を多面的に見る力、俯瞰する力を身につけるには?│イノベーション・キュレーター塾 運営スタッフ×卒塾生 [対談前編]

中小企業診断士、経営者、金融機関やメーカーなどの会社員、公務員、大学職員、弁護士など様々な分野から3年間で計54名が参加しているイノベーション・キュレーター塾(以下、キュレーター塾)。東は東京、西は鳥取から集まった塾生たちはプログラムを通じてどんな力を身につけてきたのか、1年間でどんな変化を遂げたのか。SILK歴3ヶ月の広報柴田が、2015年のキュレーター塾立ち上げから現在まで運営スタッフとして塾生を支え続けている山中さん(SILKイノベーション・コーディネータ)・2期の卒塾生である石井さん(SILKイノベーション・コーディネータ/中小企業診断士/山城茅葺株式会社 経営管理担当)に疑問をぶつけながらお話を伺いました。

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物事を多面的に見る力、俯瞰する力を身につけるには?│イノベーション・キュレーター塾 運営スタッフ×卒塾生 [対談前編]

基本的に人間は、片方の側面からしか物事を見ないんですよね。

──前期のトークセッション6回、後期4回のマイプロジェクト実践を通して、塾生さんはどのように変化していきますか?

石井: 私自身のことを話すと、物事を見る視点が変わったっていうのは非常に大きいです。例えば、ニュースで色んな事件とか社会の状況を見て、今までは「へーこんなこと起こってるんや」と情報のみを受け取っていたのが、なぜそうなったのか、背景は何なのか、と色々な側面から考えるようになったんですよね。

キュレーター塾第1回のバングラデシュのラナプラザ(注)のお話を聞いて、自分たちに届く情報はごく限られた、しかも誰かの解釈が入った情報でしかないこと、そこから掘り下げて考えることが大事だということを感じました。一つの事象であっても違う視点から見ると見え方が違うことに気づいたんです。この視点の変化は、中小企業診断士や茅葺きの仕事にも活きています。

注:ラナプラザのお話…バングラデシュのラナプラザで起きた商業ビル崩壊事故。建築基準を守らずに建て増しを繰り返したビルで、事故前日に柱にひびが入っていることを従業員が訴えたにも関わらず経営側が出勤を要求し、1000名以上の命を奪う崩壊事故が起きました。この事故は、日本でのテレビやメディアではほとんど取り上げられませんでした。「建築基準を守らないオーナーが悪い」などの批判で終わるのではなく、この事故を多面的に捉えることで、劣悪な労働条件で従業員を働かせ、徹底的にコストをカットすることで安価な商品を提供し続けているファストファッション業界の仕組み、更には「安いもの」を追求する消費者一人ひとりのあり様が本質的な問題としてあることに気づきます。

> 詳しくは第1回レポートへ

──なるほど。視点が変わると、思考も行動も変わってきますよね。

石井: 基本的に人間は、片方の側面からしか物事を見ないんですよね。例えば、茅葺きの茅っていうのは草ですよね。これは誰から見ても変わらないんですけど、我々事業者から見ると貴重な資源なんですよ。でも地域の人たちから見たら、家畜の飼料や家作りという使い道がなくなってきて、今は景観を乱すものでしかない。更にイノシシや鹿の隠れ家になるので、獣害の温床にもなっているという問題があります。同じ茅でも見る立場によって価値が全然違うなということを、キュレーター塾で色々な話を聞く中で考えるようになりました。

──茅って普通にそのへんに生えているものなんですね。

石井: そうなんです。最初は、茅が手に入りにくい状況を「茅が足りない」と思っていたんですけど、ないことが問題なのではなく、茅はあるのに価値を感じる人にうまく届いていない、つまりマッチングができていないことが問題の本質なのかなと思いました。これは塾に来なかったら、まだ気づいてなかったかもしれないです。得たもので一番大きかった。

山中: ええこと言うなぁ。

石井: でもこれも、多分ただ話を聞いているだけでは得られなかったと思います。前期の2、3回目から、色々なゲストの話を聞くことと並行して、仕事や人生で自分が当事者性をもって実現したいことを「マイプロジェクト」として実践していきます。そうやって行動を起こす中で試行錯誤することで初めて身についたものなんです。言葉ではわかっていても、やってみないと会得できないことっていっぱいあるじゃないですか。

──自分のプロジェクトを様々な視点から見る必要があったということですか?

石井: プロジェクトをキュレーター塾の中で実践することには大きく2つの意味があると思っていて、1つは実践することによって社会に変化が起きたり、実現したい未来に近づいていくこと。もう1つは、やっていく中で必ずうまくいかないことが出てくるんです。うまくいかないから、視点を変えて自分のやりたいことを捉え直してみる。これは頭で考えているだけでは経験できないことですね、小さくてもアクションを起こさないと得られない。

山中: まさにそういう意図で「マイプロジェクト」の実践をプログラムに入れています。自分が大切に取り組んでいること程、どうしても近視眼的になりがちで、自分の目線でしか見られなくなるんです。そういう時に、外部からの投げかけによって視点が広がることってありますよね。そのために私も塾長やSILK所長も、塾生にたくさん問いを投げかけます。

石井: 問いによって視点を引き上げられるというか……こう、きゅっと首の後ろを持ち上げられるようなイメージです。

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「そもそも何のためにするの?」「なぜあなたがそれをしなければいけないの?」

山中: 例えば、消費者教育をしたいからこういうイベントをしたい、という塾生のプロジェクトに対して、「それはそもそも何のためにするの?」「消費者教育を通してどういう社会を作りたいのか?」「具体的にどんな人がどういう風に変わってほしいの?」「なぜあなたがそれをしなければいけないの?」「子供のために、というけれど、あなた自身はどうしたいの?」と問いを投げかける。今の自分の視点からは見えていないことに気づいてもらいます。

石井: 塾の合間に少人数で開催されるフォローアップ会も含めると毎月1、2回議論の機会があるので、そこに向けて自分がアクションを起こす動機付けにもなるんですよ。

──前回から変化なしというわけにはいかないですもんね。

石井: 皆が全員のプロジェクトの状況を知っているので、自分だけやらないわけにはいかないですし、他の人の話から刺激も受けます。後期はプロジェクトを題材にひたすら対話をするので、お互いのプロジェクトのキュレーターになって、アドバイスや意見を言い合う経験にもなります。

──この人はだいぶ変わったなぁという塾生は例えばどんな方がいますか?

山中: 金融機関に勤めてはるAさんの変わりっぷりはすごかったです。Aさんは個人としての参加ではなく、企業の人材育成の一環として費用も企業負担での参加でした。最初は「ソーシャルってなんですか?カタカナで言われてもよく分かりません」って感じでした。第1回の後の懇親会でも「よく分からなかったんですよ」っておっしゃっていて、「次から絶対その場で分からないって言ってくださいね!」と言いました。

そんなAさんが、第2回に社会的責任(CSR)の分野でコンサルティングをされている株式会社レスポンスアビリティの足立直樹さんのお話を聞いて目の色が変わったんです。それまで彼の中で、ソーシャルな活動は企業に余力があればやるものと思っていたようなんですけど、足立さんから世界的大企業の事例などを聞いて、金融機関として知っておかないと、将来お客さんに損失を与えてしまうことになるような必須情報だという認識に変わったそうです。キュレーター塾は、Aさんのようにソーシャルに全く興味のない方にもぜひ来ていただきたいんです。

> 詳しくは第2回レポート

石井: 1人ひとり、どこかに変化のターニングポイントがある感じですよね。なんとなく思っていたことが、自分ゴトになる瞬間というか。

──どの話が響くかは人によって違うんですね。

山中: そうですね。なので、多様なゲストに来てもらっています。最初にSILKの大室所長が概要を話して、その後は、ビジネスで大きな実績を上げて世間的に認められている人、若手でガンガン動いている人、平田オリザさん(劇作家・演出家・青年団 主宰)のようにビジネス以外の場で活躍している人など。オリザさんはビジネスの実践者ではないですが、紛れも無いイノベーション・キュレーターだと思います。演劇を使って日本を変えようと本当に思っておられるので。色んな人が来てくれると「あの人と自分では立場が全然違うし……」っていうような言い訳もできないですしね。

[後編]に続きます

写真・文:柴田明(SILK)

[メンバー]

山中 │ SILK立ち上げメンバーであり、キュレーター塾の運営にも第1期から携わる。毎年塾生たちと笑いあり涙ありの濃密な日々を過ごしている。

石井 │ キュレーター塾の卒塾生(2期生)であり、2018年4月からSILKに参加。中小企業診断士、茅葺きの会社の経営管理担当としても活動中。

柴田 │ 2018年4月から広報担当としてSILKに参加。Web制作のディレクター・コピーライターとしても活動中。

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