INTERVIEW
Jul 15.2020

インタビュー企画「ピンチをチャンスに!」【第8回】木村 祥一郎さん | 木村石鹸工業株式会社

企画主旨

第8回は、SILKや「これからの1000年をつなぐ企業認定」の認定企業とも関わりが深い木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長 木村 祥一郎さんです。IT企業を18年間経営した後、家業である木村石鹸工業に入社した木村さん。天然素材を使い、昔ながらの釜焚き製法で作ったブランド「SOMALI」など、その誠実なものづくりの姿勢が多くの人に信頼されています。新工場「IGA STUDIO PROJECT」や、クラウドファンディングで目標額の15倍を超える応援が集まったシャンプー「12/JU-NI」など、2020年も木村石鹸の新たな挑戦から目が離せません。そんな木村さんに、コロナ禍の状況についてお話を聞きました。是非ご一読ください。

インタビュー企画「ピンチをチャンスに!」【第8回】木村 祥一郎さん | 木村石鹸工業株式会社

Q: どんな事業をされているか、簡単に教えてください。

木村: 主に家庭用・業務用の洗剤類の製造販売を手掛けています。一般家庭で使われる洗剤が売上の70%、工場などで使われる業務用洗剤が30%という構成です。家庭用洗剤の中では、OEM(相手先ブランドの製造受託)が85%ぐらい、自社ブランドが15%ぐらいとなっています。特徴は、「釜焚き」と呼ばれる古くからある製法で、今も油から石鹸を作っていることです。釜焚き製法で作られた石鹸は、当社の数多くの製品に洗浄成分として配合されています。

Q: 新型コロナウイルス感染症による影響はありますか?

木村: 中国向けの家庭用洗剤の売上が全体の20%近くありましたが、2020年1月から注文がパタリと止まり、1〜4月は0になりました。売上の20%がなくなったので、1~3月は毎月1,000万円を越える営業損失が出ました。

また、容器や原料など資材の入手が非常に難しくなりました。これは今も続いています。スプレー容器などは注文から納品まで10カ月以上という納期回答が来たり、ある原料は「いつ供給できるか不明」という回答が来たり、商品の製造に支障をきたす状況になっています。

Q: 影響を受けて新たにチャレンジしたことと、その中で見えてきた課題や解決策を教えてください。

木村: 3月下旬からは外出自粛、巣ごもり消費の追風もあって、各種家庭用洗剤全般で対応しきれないほどの注文が来て、中国向けの落ち込み分をリカバリーしてくれました。その急激な需要増に対応できたのは、売上が大きく落ち込んだ1~3月に、新工場で機械や製造ラインのテストを繰り返し、バグを出し尽くし、きちんと動ける体制を取れていたことが大きかったと考えています。(新工場は2020年1月稼働開始)

また、容器や原料などの資材調達が難しくなる中で、今までお付き合いのある協力会社さんが、様々な面で積極的にサポートしてくれたことも大きい要素でした。倉庫に眠る別の容器を探し出して提案してくれたり、別の会社にも声をかけて代替容器を見つけてくれたり、通常の取引の範囲やレベルを越えて助けてくださいました。これまでの取引において、協力会社さんを大事にし、長期的な信頼関係を築くことができていたからこそのご厚意だと思います。

木村石鹸ではここ数年、社員一人ひとりが自ら考えて意思決定を行い、行動するという自律型組織を目指してきました。このコロナ禍では、自律型組織の強みがものすごく発揮されたなと実感しています。一人ひとりが、今、自身ができる最大の貢献を考えて行動してくれました。

ある開発社員は、手洗いや消毒の回数が増える中、手荒れに悩む方が増えているだろうと考え、ボディ用に開発していたクリームを、急遽、ハンドミルクとして改良する提案をしてくれました。

そのハンドミルクがテレビ局の目にとまって、全国放送の報道番組で取り上げてもらうことになりました。その時、「せっかくの全国放送だし、このチャンスを逃したくない」と、自社ブランドのチームのメンバーたちが、急遽、ネットでの予約受付フォームを作ってくれました。おかげで発売自体は1カ月以上先だったにも関わらず、すごい数のオーダーをいただくことが出来ました。

こういったことは、会社が指示したのではなく、すべて社員が考え、行動に移してくれたことです。ただでさえコロナ禍のオペレーションで、不自由な状況であるのに、会社からあれこれ指示を出して無理矢理やらせても、うまく行かないことの方が多いのではないかと思います。木村石鹸の場合は、自律的に社員が動いてくれたからこそ、このピンチを乗り切ることができました。

Q: ピンチをチャンスに変えるために心掛けていることは何ですか?

木村: 悲観的にならないことです。特に、経営者が悲観的になると現場は動揺します。大変な状況でも少なくとも表向きは楽観的に構えて、笑顔を絶やさないこと。そして、社員を信じて任せることではないでしょうか。

Q: 最後に一言!(これから行いたいチャレンジ、読者へのメッセージ等)

木村: よく言われることですが「夜明け前が一番暗い」ということです。明けない夜もないと思います。苦難な困難にも、それにしっかり向き合い、もがき苦しめば、何かしら打開策も見えてくるのではないでしょうか。諦めずに前を向いて歩みを止めないことだと思います。


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photo:木村 祥一郎
木村 祥一郎
木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長

1972年生まれ。1995年大学時代の仲間数名と有限会社ジャパンサーチエンジン(現 イー・エージェンシー)を立ち上げ。以来18年間、商品開発やマーケティングなどを担当。2013年6月にイー・エージェンシーの取締役を退任し、家業である木村石鹸工業株式会社へ。2016年9月、4代目社長に就任。

自律型組織を目指し、稟議書の廃止や「自己申告型給与制度」の導入、社員自らが組織づくりを行う「じぶんプロジェクト」等、様々な施策を通じて組織改革を行っている。 事業では、OEM中心の事業モデルからの自社ブランド事業への転換を進め、石鹸を現代的にデザインしたハウスケアブランドを展開。2019年12月Makuakeでスタートしたヘアケアブランド「12/JU-NI」は、支援額500万(達成率1699%)を越えた。2020年より三重県伊賀市での新工場「IGA STUDIO PROJECT」の稼働を開始。

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