働き方改革
Nov 7.2018

中小企業が一番変わりやすいですよ。何でもできるので一番楽しい。│京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」実践セミナーレポート[後編]

中小企業が一番変わりやすいですよ。何でもできるので一番楽しい。│京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」実践セミナーレポート[後編]

[前編]はこちら

小さな組織の方が変化を起こしやすいんです。何をやるべきか、課題の本質を丁寧に議論できるので。

ピョートル: 中小企業って一番変わりやすいですよ。僕らが今一番楽しんでいるプロジェクトは、岡山県の100年以上の歴史がある中小企業とか、神奈川県の5代目社長の中小企業とか。なんで楽しいかというと、中小企業では社長と仲良くすれば何でもできるんです。

世羅: 大企業と一緒にやるプロジェクトと中小企業との場合で明らかに違うなと思うのは、大企業って、予算が潤沢にあるので事例を追いかけちゃうことが多いです。あの会社がやってたからやってみよう、という動機で入るので、何のためにやるのかが曖昧になってしまうんですよね。中小企業は予算が限られているので、うちの会社は何をやるべきなのかをすごく丁寧に議論します。中小企業に行って私たちが一番最初にするのは、歴史を振り返ることです。会社が続いてきた理由は何なのか、自分がこの会社で働いて誇りに思う時はどんな時なのか、皆さんの誇りを集めるところから始まります。大企業の場合は、これが課題でこう直したいのでこれをやってください、とピンポイントで依頼が来ることが多いです。

大室: 課題設定が違うと思うんですよ。現場の人が課題だと思っていることは、本質的な課題とはずれていることも多いです。課題設定そのものを疑うところから入らないと、変化なんて生まれない。その本質を掴むためには「人が動いてくれない」「意思疎通ができない」みたいな表面的な問題ではなく、世羅さんがおっしゃる会社の良さとか誇りとか、そういうポジティブなところから入っていかないと到達できないと思います。

田中: 今、京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」もそんな感じで進めていっていて、「テレワークをやりたい」のような具体的な課題が最初からあがっている場合もあるんですけど、まず皆で「うちの会社らしさってどこにあるんだろう」という話ができる、コミュニケーションの土壌を作ることが第一段階かなと思っています。

大室: 多分、大企業の方が変化しづらいですよね。でも大企業にもおもしろい動きをしているところもあります。イトーキさんという事務機器の会社は、代々創業家は会長にしかならないんです。社長は中から上がって来た人で、大きな意思決定は創業家がするけど普段は全部社長が意思決定します。日本に昔からある番頭制ですよね。

ピョートル: 小さな組織の良さは、デタラメが許せないことですよね。サービスやモノづくりに必死に関わらないとすぐに収益に響くので、従業員一人ひとりが生き残るための戦力にならないとすぐにつぶれちゃうんです。だからマネジメントしやすい。どの社員がどんな働きをしているかがすぐに見えます。逆に言えば、よほど生命力やスキルを持たないと中小企業では働けないです。大企業から中小企業に転職する人の離職率が高いのは、結果が出ないからなんです。経営者にとっても従業員にとっても、自分の市場価値がわかりやすい。

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僕は「働き方」という言葉はあまり好きじゃなくて、働き方改革はデタラメだという記事を出していろんな人たちに怒られたんですけど(笑)。そしたら経産省に呼ばれちゃって、ビクビクしていたら、あなたの考えはおもしろいから一緒にやろうと言われて驚きました。経営者は経営改革や社員の生き方改革には興味があるけど、働き方改革にはあまり興味がないように思います。働き方改革はプロセスであって、経営のど真ん中ではないんですよね。プロセスを変えることも大事ですけど、それよりもアウトプットを重視した組織改革をしていく方がいいと思うんです。

楽しくいきましょう。小さなことから始めましょう。そして、世界を止める習慣をつけよう。

田中: 私たちも「働き方」と「生き方」を重ねていくという考えはずっと持っていて、生き方を考えることは非常に大事だと思っています。このままずっと話していたいんですけど、そろそろ時間が来てしまったのでお三方最後にひとことお願いします。

大室: 楽しくいきましょう。働くっていう概念よりも、生きることを楽しみましょうよ。ぜひあいまいな世界を見てください。ロジックでは楽しくなりませんから。社会とか文化とか歴史って、すごいあいまいなんです。そのあいまいさを楽しんできたのが京都の人だし、そこからイノベーションが生まれてきたと思います。能なんてすごいですよ。あれ程あいまいな美意識にすぐ触れられる街に住んでいることは、なんと贅沢なことかと思います。

世羅: 変化を起こす時に私個人が大切にしていることをお話ししますね。先ほど、ちょっとだけ居心地が悪い空間を作ることから始めるっていう話をしたんですけど、「変わらなきゃだめ」「改革を起こさないと」と極端なことを言い続けても、自分も組織もそんなにすぐに変われるわけじゃないです。いきなり大きな変化を求めると逆に抵抗心が強くなってしまうこともあるので、小さなことから始めていってみてください。上司への質問の仕方や話し方を変えてみるとか、情報の集め方を変えてみるとか、会う人を変えてみるとか。そこから徐々に変化の幅を大きくしていくことが大事なんじゃないかなと思っています。

ピョートル: いっぱい言いたいことがあるんですけど、一つだけ。世界を止める習慣をつけていただきたいです。世界って、自分の頭の中で常にワーーーッて動いてるんです。それを止めたら、おもしろいことが見えてきますよ。こうしなきゃだめ、これはやっちゃだめ、こうしなさい、っていう自分の日常生活にプログラムされていることがわかるんです。それは自分のやりたいことではなくて、家族や上司、クライアントなど外からの期待を受けてできたものです。世界を止めるというのは、自分のやっていることを疑う瞬間を作っていただきたいということです。今やろうとしていることは本当に必要なのか、価値があるのか、自分は何がやりたいのかをしっかり考える時間を持ってください。

田中: ありがとうございます。この後おもしろいワークショップも用意していただいているので、トークはここで一旦終わりたいと思います。

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時間を無駄にする質問、人生を変える質問とは

後半のワークショップではピョートルさん・世羅さんがファンキーな帽子をかぶって登場!ふたり一組のペアを作ってワークを進めていきます。トークの感想やお互いの仕事について盛り上がる会場は、「相手の目をしっかり見てください。喋らないでください。」という世羅さんの言葉を受けて静まり返りました。沈黙の中、真正面から視線を交わし合う濃密な時間が続きます。そろそろかな……もうええんちゃうかな……と何度目かに思った頃、ようやく世羅さんの一声で沈黙が破られました。ちなみにこの状態を4分間続けると恋が芽生えるそうです。心的距離がぐっと縮まったところで、お互いに7つの質問を問いかけます。

 1. あなたは仕事を通じて何を得たいのか?
 2. どうしてそれを得ることが大切なのか?(3回問う)
 3. 何をもって「いい仕事をした」と言えるだろうか?
 4. どうして今の仕事を選んだ(選んでいる)のか?
 5. 去年の仕事は、今年の仕事にどう繋がっているだろうか?
 6. あなたの一番の強みは何だろう?
 7. 私(たち)はあなたをどう支援できますか?

「時間を無駄にする質問」ではなく「人生を変える質問」をしましょう、というピョートルさんの言葉に、多くの方が日頃のコミュニケーションを振り返ったのではないでしょうか。この後、壁にはられた変革を起こすキーワードについてペアで議論し、グループで共有。短い時間でとても刺激的な体験をさせていただきました。

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「心理的安全性」を組織の中につくるところから、誰もが自己実現できる社会を目指しています。

こうしたワークや企業コンサルティングを各所でされているプロノイア・グループがどんな組織なのか、世羅さんのご紹介でレポートを締めくくりたいと思います。

世羅: 私たちプロノイア・グループは、「変化を起こす」というよりも「変化が起きるように自分たちが先に未来をつくる」ことを目指して、「未来創造企業」と自分たちのことを呼んでいます。

プロノイアは「先読み」という意味のギリシャ語です。いつも三歩先読みをして、パートナー企業と一緒に未来を創っていくことが私たちの事業です。「クライアント」ではなく「パートナー」と呼んでいるのですが、どちらかがどちらかを助けるという風にすると限界が生じてしまうと思っていて、常に一緒に考え、一緒に学びを生み出していくということを大切にしています。

ビジョンとしては、シンプルに「誰もが自己実現できる社会」を目指しています。ミッションはちょっとチャーミングにつけたんですけど、「日本のビジネス界に魔法をかける」というものです。色々と真面目に論理的に考えるより、クリエイティブに魔法をかけるイメージで未来を創っていこうと思っています。

まず組織を変えようと思うと、人事制度を変えようとか、施策を考えよう、という風に考えてしまうんですけど、私たちが大切にしているのは、変化を起こす前に変化が起きる土壌を組織の中に作りましょうということです。それを「心理的安全性」と呼んでいて、誰もが誰もに対してなんでも言える、フラットな組織を作りたいんですね。楽しいこと、悲しいこと、難しいことがある中で、どんなことでも気づいたことをお互いに話せる土壌をまず作る。その土壌ができて初めて、どういった制度や施策を作っていくかを考えていきます。変革のプロセスを三段階で捉えていて、土壌があって、しかるべき制度があって、それを継続的に変えていけるリーダーがいる。その3つがそろうと、変化を起こしていくイノベーティブな組織ができていくと考えています。

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田中: 「心理的安全性」っていうのは大事だなと思うんですけど、ただ仲が良いということとはちょっと違うんですよね?

世羅: そうですね。心理的安全性と仲の良さとの違いは、対立もできるということが大きいかなと思います。仲良くなっていくと、同意したりお互いに褒めている方が楽しくなってきて、「私は違うと思う」「あなたのこういうところが不満です」ということが言えなくなってきてしまうんですよね。あなたにもっとこういうことを求めているという意思表示があって、建設的な対立ができることが必要です。

田中: この土壌を作るところで悩まれている方がたくさんいますよね。プロノイアさんの社内はどんな雰囲気なんですか?

冗談なしに真面目な話はしない、どんな時も笑いを必ず散りばめたい。

世羅: 私たちのカルチャーをご紹介しますね、3つ会社の中でこれは大事にしようと思っていることがあります。

○Play work/遊ぶようにはたらく
○Implement first/前例をつくる
○Offer unexpected/予期せぬことを提供する

ここにもちょっと遊び心があって、ピョートルはよく「ピョーさん」と呼ばれるので、文化の頭文字をつなげるとPIOになるようにしてみました(笑)。「遊ぶようにはたらく」というのは、冗談なしに真面目な話はしない、笑いを必ずどこかに散りばめたいなという気持ちがあって。これは社内やイベントの時だけでなく、パートナー企業と話をする時も同じです。

「前例をつくる」は、新しい実験をし続けるし、新しい失敗を大歓迎するということですね。ピョートルはすごく厳しいので仕事のクオリティについてはよく私たちも怒られるんですけど、新しくした失敗については彼は怒りません。3つ目の「予期せぬことを提供する」は、例えばパートナー企業に対してイエスマンにならないこと。お金をもらうために何でもやるんじゃなくて、きちんとポリシーを持って自分たちが創るべき変化を生み出していくことです。時には相手が混乱するように仕掛けていくことで、本当に大事なことはなんだろうというのを問いかけていきます。

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プロノイアさんとSILKがご一緒したのは、今回のセミナーが初めて。私たちにとっても学びの多い、何よりもとっても楽しい時間でした。大室所長も田中コーディネーターも終始笑顔ではしゃいでおりました。ピョートルさん、世羅さん、ありがとうございました!

会場 : GROVING BASE
写真・文 : 柴田 明 (SILK)


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