SILKの研究
Sep 5.2023

「生きる」と「働く」を和える|藤田 朋巳|和える

「生きる」と「働く」を和える|藤田 朋巳|和える

[目次]

1. 「香川県からフルリモート勤務」という働き方の誕生
2. 多様な働き方が自然と誕生
3. 「自分たちが、会社を育む」という意識
4. 一人ひとりが、より良く生きるために

1. 「香川県からフルリモート勤務」という働き方の誕生

「四国拠点も、リモート勤務募集もないけれど、履歴書を送ってみる!」

そうワクワクしながら友人に語っていたのは数年前のこと。偶然ネット上で見つけた、全国の職人さんと共に“0歳からの伝統ブランドaeru”を展開する、株式会社和える。「幼少期から日本の伝統に出逢う機会を生み出す」という想いに、とても共感しました。ほかにも、ワークショップやオリジナルの教育プログラム“aeru school”を実施するなど、日本の伝統を一つの有意義な手段として、子どもの感性や非認知能力を育むことに従事している会社です。

それは、当時の私の心にあった「幼児教育」「日本の伝統」「感じる心」という一見バラバラな点が、つながった瞬間でもありました。

大学卒業後、約8年間のスウェーデン暮らしを経て、12年ぶりに香川県へUターンした私。北欧での子育て経験を経て、幼児教育に興味を抱き、「北欧の教育も素晴らしいけれど、日本には、日本だからこそ幼児教育に活かせる“何か”がある。そして、その秘密が日本の伝統文化にあるのでは?」という想いに至りました。じっくりとアンテナを張り巡らせていたところ、運命的に出逢ったのが、和えるだったのです。

全国各地の職人と展開するオリジナルブランド “0歳からの伝統ブランドaeru”

和えるは、京都・東京に拠点を置く会社で、リモート勤務の採用募集もありませんでしたが、「ここで働きたい!」と直感で感じた私に、履歴書を送らない理由はありませんでした。そして、こんな私からの挑戦状を「フルリモート、やってみましょう!」と実に軽やかに受け入れてくれた和える。前例や固定概念にとらわれず、子連れでの出張や、「0円〜社長を貸し出してみよう」という取組など、社会的な実験を試み続けています。このような柔軟な思考の会社でなければ、私は面接にすら辿りつけていなかったかもしれません。

2. 多様な働き方が自然と誕生

こうして、フルリモート勤務という働き方が誕生したのですが、実は和えるでは、他にも「子連れ出勤」「複業」「多拠点就業」「時短勤務」「育休からのゆるやかな復帰」など、さまざまな働き方が実現しています。

子どもたち同伴の出張の様子

一つひとつを見れば、今の時代、決して珍しい働き方ではないかもしれませんが、和えるの特徴は、「こんな環境/制度を作ろう!」という目標を掲げて、新しい働き方を生み出しているわけではない点です。

これらは全て、それぞれの社員が「自分には何が大切で、どうあれたら幸せか」を追求した結果、派生的に生まれたものです。よく驚かれるのですが、和えるでは、お給料も自己申告制。働く場所、お休みの日数・働く時間数なども、基本的に自分で決めます。

誰かに決められるのではなく、「自分はどうしたいのか」と自己対話を重ね、生き方・働き方を、自分でデザインしていきます。そして、その都度、新たな働き方や制度が自ずと誕生していった、という流れなのです。私のフルリモート勤務もまさにその一つ。もともと制度があったわけではなく、新たな文化を共に作ってきています。

このように多様な働き方が自然と生まれる背景には、先述の実験を続ける姿勢に加え、「個々がより良く生きること」を大切にする文化が、会社に深く根付いていることがあります。

3. 「自分たちが、会社を育む」という意識

ここまで読むと、「なんて自由な会社!」とお感じになるかもしれませんが、「自由=楽」ではないことも付け加えておきたいと思います。このような働き方は、社員それぞれに「自分たちが、会社を育む」という意識があるからこそ、成り立っています。「お給料は自動的に会社から貰えるもの」という考えの人は、一人もいません。

また、私の場合、前例のなかったフルリモート勤務を始めたので、「オンラインでどのように貢献できるのか」「人間関係の構築」「自己管理」など、課題はありました。それらを会社が用意してくれるものだと思ったことはありません。自らが模索しながら、その課題と向き合っていくという認識は、大前提としてありました。

フルリモート勤務において、今でも一番難しいと感じているのは、健やかな自分を保つこと。オンオフの切り替えの難しさはもちろん、管理されない働き方であるが故に、慣れない頃は、仕事に飲み込まれてしまいそうになることが多くありました。休むべき時間なのに、つい手を動かしたくなることも……。コーヒーを飲みながら優雅に働いているような印象を持たれることも多いのですが、私にとって「人の目がない」「管理してくれる人がいない」という環境は、つい働きすぎてしまう要因になりました。

けれど、健やかな自分こそが、ベストパフォーマンスを出す鍵であり、それは結果的に会社を育むことにもつながります。休むことに謎の罪悪感を抱いていたこともありますが、「しっかりと休むこともプロの仕事」という和えるの文化のおかげで、休むことに意識的に取り組めるようになってきました。

4. 一人ひとりが、より良く生きるために

実は最近、私は働き方を変えました。

代表の矢島との対話の時間に、毎日泣きながら保育園に通っていた息子について話をしていた時。矢島の「うーん、そしたら息子さん、転園したらどうかな?」という一言がきっかけでした。

私の暮らす地域には、選べるほどたくさんの幼稚園や保育園がありません。働くために長時間預かってもらえることを重要視して、自分の教育方針と園の方針が少し異なると理解しながらも、幼稚園ではなく保育園を選択していました。そんな中、「行きたくない!」と泣きながら訴えることが増えてきた息子。「でも、ママお仕事だから仕方ないでしょ?」と言い聞かせる日々に、私の心は、とてもざわざわしていました。

矢島との対話を通して、いつの間にか「働くからには保育園に通わせるしかない」という思い込みにとらわれていたのだと気がつきました。改めて、今の自分が本当に大切にしたいものを言語化することができ、息子は幼稚園へと転園。勤務時間は減りましたが、毎日楽しそうに幼稚園へ通う息子を見て、心から良い選択ができたと感じています。

毎日、生き生きと過ごす息子の姿は、私自身のパフォーマンスにも影響していると感じる。

和えるには、福利厚生のひとつとして、代表の矢島とゆるやかに話をし、思考を豊かに整えられる「対話の時間」があります。さらに、心と身体を整える日本鍼灸など、一人の人間としてより良く生きるための制度があり、自分を整えるためにとても役立っています。

和えるにとって欠かせない「心と体を整える日本鍼灸」は、2024年京都・与謝野町にオープン予定の体験型宿泊施設“aeru time-stay”にも導入予定

私が働き方を変え、時短勤務になることを他の社員に伝えた時にも、自分の心の声に気づけたことを「素晴らしい!」と言ってくれました。「息子の心を育むことに注力したい」という私の決断を、心から応援してくれる社風なのです。

・「一人ひとりが、より良く生きること」が会社の文化として浸透していること
・自分がどうしたいのか、まずは本質に向き合い、そこから必要な場合に、制度や環境といった外側の部分を作っていく流れであること

これこそが、今、本当に必要とされている「働き方改革」だと感じています。条件や制度といった外側にまどわされず、感じる心を大切に、本当に大切なものを見極めていきたいですね。そして、そういった一人ひとりの人間らしい決断を、応援できる会社がたくさんある。それがあたりまえの世の中になることを願っています。


 


>「SILKの研究」トップへ
>研究テーマ・研究員リストへ


photo:藤田朋巳(ふじた・ともみ)
藤田朋巳(ふじた・ともみ)
株式会社和える プロフェッショナルアシスタント
香川県在住、入社時より完全フルリモート勤務。ライティング業務を軸に、オンラインにて和えるを育む。北欧での子育て経験を経て、幼児教育に興味をもつ。そのような中、「日本の伝統」を通じて、「幼少期から感じる心を育む」ことに従事する和えるに出逢い、アプローチ。自分との対話を通して日々、「自分らしい生き方・働き方」に向き合う社会実験中。

SOCIAL NETWORK

SILKのソーシャルアカウント

  • これからの1000年を紡ぐ企業認定
  • sustainable tourism
  • KYOTO SOCIAL PRODUCT MAP