INTERVIEW
Jul 10.2020

弁護士 田中暖子さんーイノベーション・キュレーター塾生インタビュー

7月から、6期生の募集を開始するイノベーション・キュレーター塾。

昨年卒塾された4期生にお話を伺い、塾の魅力と塾生の方々に起こった変化をご紹介します。

今回は、弁護士の田中暖子さん。「伝わりにくい情報を、ちょっとでもわかりやすく」とグラフィックレコーディングに取り組まれています。卒塾後も、卒塾生が参加したSILKのイベントや塾同期の中須 俊治さんの事業をグラフィックレコーディングで発信してくださり、卒塾生同士が応援し合う動きが自然と生まれています。入塾されてからの変化や、田中さんご自身の思い描いているつくりたい未来について語っていただきました。

弁護士 田中暖子さんーイノベーション・キュレーター塾生インタビュー

Q: なぜ、イノベーション・キュレーター塾に参加しようと思われたのですか?

田中: SILKが主催したソーシャル・イノベーション・サミットに参加したことがきっかけです。多様な力を合わせて前向きに社会課題に取り組む皆さんのお話、生き生きと仕事について語る姿がとても新鮮で魅力的でした。配られた塾のパンフレットを見るとゲストもバラバラですし、当時はイノベーションのイの字も知らなかったので、ここで何を学べるのか分からないままでしたが、分からないのがまた面白いと思いました。

Q: 塾の受講中に取り組まれたマイプロジェクトの内容と、そこに込められた思いは?

田中: 弁護士は、普通の日常の裏に隠れている、胸が苦しくなるような悩みや争いに接します。事故や事件で大切な存在を失う方、紛争に思い悩み自死された方、組織内・家庭内の不和で心身を蝕まれる苦しみ……

数多くの争いの解決に追われながらも、この争いの種を減らすために何もできていないことに、常にモヤモヤしていました。同時に、法律を含め大切な議論は思った以上に小難しい存在で、一部の人には理解できても、必要な人には理解されない……今のまま、人々から遠い存在でいいのだろうか、という漠然とした課題意識もありました。

塾に通いながら悶々とする中、リアルタイムで議論や対話を可視化する“グラフィックレコーディング”に出会いました。参加者の意見や気持ちをフラットに紙に描きだすことで、対話が促進され、可視化されることで腑に落ちる。言語情報だけでなく、視覚情報を取り入れることで、これまで伝わらなかった人にも届けられるかもしれないと思いました。そこから、「伝わりにくい情報を、ちょっとでもわかりやすく」をテーマに、描いて、描いて、伝えて、フィードバックをいただくようになりました。

Q: イノベーション・キュレーター塾を受講する中で、どんな気づきがありましたか。また、その気づきにより、当初想定していたマイプロジェクトは現在どのように変化しましたか?

田中: 起きている現象に真っ向から取り組むことだけが課題解決の手段ではないということを、実践者から直接学べたことが大きな収穫でした。目に映る課題を遡ると、深い根があります。その根を改善するためにはどうしたらよいのか、広い目で俯瞰して、目指すべき未来はどこかと考えるようになりました。

最も印象的だったのは、劇作家 平田オリザさんの、芸術を通じた地方創生のお話と、著書「わかりあえないことから」に記されたコミュニケーション論でした。恥ずかしながら演劇には苦手意識があったので、塾がなければお話を伺うことはなかったと思います。

「同じ社会で生きているのだから」「家族だから」「同じ教育を受けているのだから」分かるはずだ、ではなく、皆それぞれに多様で「分かり合えない」を出発点にすると、その上でどうしたらいいかと考えることができます。

「伝わりにくい情報を、ちょっとでもわかりやすく」というマイプロジェクトも、「分かり合えない」を出発点に置くことになりました。ロジカルな言語情報だけでは届かない人に伝えるにはどうしたらよいのか、「難しそう」の壁を超えてどう伝えるのか。悩む中で、お互いに理解のずれに気付き、伝わらない・知らないことで生じる分断を防ぎたいのだと、自分の思いも明確になっていきました。

Q: 卒塾後1年たちましたが、現在の取り組みについてご紹介お願いします。

田中: どんなことも描いて、伝えて、実践しながら模索しているところです。相談や講演においても言語だけでなく視覚的な情報を加えてお伝えすると、短時間の簡単なメモであっても、コミュニケーションが増え、より理解が深まるように思います。コロナにより情報が氾濫した際は、ややこしい制度を読み解いて絵を入れて発信しました。初めてこの情報を知ったという方や、制度を使えるよう会社に掛け合ってみたという方もいらして、思った以上にポジティブな反響がありました。

その他にも、オリザさんが地方創生に取り組む城崎の変化や、同期の中須さんの事業、より良い社会を目指す議論など、伝えたいと思ったら心を込めて描きます。描くことで生まれた暖かな繋がりは、言語だけのコミュニケーションでは生まれない交流を生み、視野を一回り広げてくれています。

塾生の仲間とは、卒塾後も月一回、お互いの挑戦を報告し合い、興味深い取組をされている塾外の方から話を伺う会を開催したり、城崎の変化を自分たちの目で見るツアーをしたりしています。それぞれのフィールドで実践しながら学びを共有してくれる有難い仲間です。

Q: どんな未来を実現したいと思っていますか。

田中: いろんな人がいて、いろんな側面があり、いろんな意見を持っています。ひとつの面で分かり合えなくても、他の面では一緒のところもあるかもしれないし、共感できるかもしれないねと緩やかに繋がり支え合う未来が理想です。

私は絵も素人ですし、視覚化と紛争解決は遥か遠く繋がらないようにも見えるかもしれません。でも、そんなの無理だよ、と諦めるよりも、そんな未来を実現したいねと共感してくれる人たちから、「だったら、こうしてみたら?」(※背中を押してくれる植松努さんの素敵な言葉)とアイディアと協働をいただきながら、遠回りに見えるようなことを積み重ねて、一周も二周も回って紛争の予防に繋がるようなことを続けたいと思っています。

Q: どんな人にイノベーション・キュレーター塾の受講を勧めたいですか。

田中: モヤモヤしつつなんとなく過ごしている人、見まわすと同じような属性・考えの人とばかり付き合っているなと思う人にお勧めします。

塾生の中には、塾を通じてモヤモヤが明確になり、転職されたり、新しいプロジェクトを立ち上げたりする方もいました。「やってみよう」の空気感にいつも刺激を受けています。

また、塾生もSILKの皆さんもとても暖かく(フィードバックは時に厳しかったですが……)、私が在塾中に独立した際にサプライズでお祝いしていただいたことも忘れられません。卒塾後も、期を超えて個性豊かな人がどんどん集まるので面白いですよ。迷ったらやってみるのがいいと思います。

・note  https://note.com/harutana


photo:お話を伺った方:田中 暖子 さん
お話を伺った方:田中 暖子 さん
弁護士 / イノベーション・キュレーター塾 第四期生

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