COLUMN
Mar 16.2021

全国に点在するプレイヤーが学び合い、それぞれの場を広げていく。|Community Based Companies Forum 〜希望の兆しかもしれない。見本市〜 レポート

2021年3月5日・6日にオンラインで開催した「Community Based Companies Forum 〜希望の兆しかもしれない。見本市〜」では、(一社)リリースの企画により、7つのトークセッションを行いました。

・希望の兆しを育むCommunity Basedな経済圏の作り方
・地域にひらく、地域とつくる、私たちの場
・可能性から紡ぐ、グローカルな共創
・願う暮らしをまちとつくり上げるデザイン
・見えない価値に共感を集めるビジネスの進め方
・Community Basedな経済を駆動するための自治体の役割
・私たちの文化をつくる、私たちのやり方

北海道、長野、鹿児島、福井、東京、栃木、秋田、沖縄、香川、熊本……全国各地からお集まりいただいたゲストの方々と共に、学び合った2日間。そこで見えた希望の兆しを、皆さんにもお届けできればと思います。

全国に点在するプレイヤーが学び合い、それぞれの場を広げていく。|Community Based Companies Forum 〜希望の兆しかもしれない。見本市〜 レポート

目に見えている社会課題だけでなく、次の100年を見据えて。まだ言語化できないものの、何か掴みつつある──そんな感覚を持ち寄り、「答え」ではなく「問い」を探究するために開催した、今回のフォーラム。

1日目は、全国各地で様々な人・資源を繋げているハブ的なキープレイヤーの方をお招きしてのパネルディスカッション。2日目は彼らにモデーレーターをお願いし、各地の実践者と様々なテーマについて探究していただきました。断片的になってしまいますが、いくつかの問いと共に、“希望の兆しかもしれない”言葉たちを少しずつご紹介させてください。

これまでの枠組みからいったん離れて、異なる文脈を持ち込むことの難しさを、どう乗り越えたのか

「最初に人を集める時には、会いに行って1対1で話すことをやり続けました。『なんで来たのかよくわからない』って、みんな言ってましたね。あの人が行くならおもしろそうだという感覚で来てくれる人が多くて、人が人を呼んで広がっていったんだと思います。」

「地域で人を集めて何かやる時には、コミュニケーションをさぼるなっていつも思います。大勢に向けて画一的なスピーチをしただけじゃ届かないんですよ。一人ひとりの思いに対して、呼びかけないと。」

「企業も地域も、既存の構造から変化することが難しいんです。外部のメンバーとの共同プロジェクトでは、一人ひとりの専門性や性格を理解した上でメンバーを選び、チーム編成にも気を配ります。『何のためにやるのかわからない』という状態からのスタートなので、事前の面談にも時間をかけますし、一見ごちゃ混ぜになっているようでも、裏ではかなり考えています。」

「一般的にデザインだと思われているところの手前の段階に、すごく手間がかかるんですよね。そこを省くと、今までの枠組みの中でしか動けない。同じ言葉を使っていても、質感が違うというか。新しい意味付けができない。」

「僕は地域に外から乗り込んでいったので、最初は『お前何しに来たん?』って思われていたし、僕自身も『何ができるんやろう』って。企業の肩書きを捨てて、一人の人間として向き合わないとどうしようもなかった。おばあちゃんにお届け物をして、30分くらい一緒に夕陽を見るとか、そういう時間がなければ、何も起こらなかったという感覚はあります。」

─パネルディスカッション「希望の兆しを育むCommunity Basedな経済圏の作り方」より

学び合うこと、変化を続けることを、どうやって実現するのか

「出会いによって自分の先入観が崩れる体験をしたら、もうやめられなくなりますよね。前提が変わる感覚、自分の世界が広がる感覚を一度でも味わったら、その経験がエンジンになると思います。」

「僕たちは3日間の合宿が活動の起点になっていて、3日間その場に参加すること自体に意味があると思っています。普段とは違う人に出会って、普段とは違う視点から考える。3日の間に答えは見つからなくていいんです。そこで問いが立てば、各々の仕事に戻って生活する中で、自ずと新しいプロジェクトが立ち上がります。」

「わかりやすい目標を持ってしまうと、人はそのフレームの中から出られなくなります。でも、よくわからない理念だけがあると、一人ひとりが悩むんです。そこで学びが起きるし、変化が生まれるんじゃないですか。本質的には、企業にミッションとか行動指針は必要ないと思います。多くの組織には余白がなさすぎる。」

「今までは、社会へのインパクトを大きくするためには、会社の規模拡大しか方法がありませんでした。でも、テクノロジーによって違う可能性が見えてきましたよね。今日のこの場も、実践者たちがノウハウを開示してお互いに学び合うことで、それぞれの土地にいながら全国各地に影響を及ぼすことができています。」

「Community Basedだと思う企業や人は、事業内容や職業を一言で言い表すのが難しいことが多いです。彼らは何が地域に必要かを常に観察していますね。遠くも見ているけど、近くにいる人たちの顔を見て、その人たちに対してモノやサービスを提供し続けている。だから、数ヶ月で計画が大きく変わることもあるし、実践のスピードも早いんです。」

─パネルディスカッション「希望の兆しを育むCommunity Basedな経済圏の作り方」より

お金じゃない価値の交換ができるようになってきた今、お金の役割をどう考える?

「お金は便利だし、大事ですよね。仕入れ先の農家さんに『値上げして』って言ったりもします。決して余裕があるわけじゃなくて、やせ我慢なんですけどね。お金の価値が軽くなっているというわけではない気がするけど、他にも選択肢ができてきたと思います。」

「田舎こそ、ちゃんとお金を稼ぐことに向き合わないと依存体質になってしまう。僕はお金大好きです(笑)」

「お金ってそもそも、社会の潤滑油的な役割のものだから、あくまでツールだと思っています。相手に尊敬の意を表すためのツールですね。全てが物々交換というのは難しいから。」

「コミュニティの中に、交換しやすいお金という価値尺度とは別に、交換しづらい、それぞれの価値尺度が生まれているのを感じました。多様な価値尺度があって、それぞれが規範を持って自分たちの経済圏を作ればいいんだって思えた。」

─セッション2-A「願う暮らしをまちとつくり上げるデザイン」より

育む。ひらく。つくる。紡ぐ。願う。集める。駆動する。各セッションのタイトルに綴られた動詞を並べてみると、この2日間に語られた数々のエピソードが脳裏に蘇ります。計10時間に渡るイベントの締め括りに、モデレーターの方々はこんなことを語ってくれました。

2日間を通して、どんなことに希望の兆しを感じた?

「皆のため、社会のための活動に見えるんだけれど、出発点はあくまで『私』だと感じました。私が開かれていって、『私たち』になって、そこに地域が近づいてくる。価値のある場所はそうやってできている気がしました。」

「ゲストの方々に共通していたのが、多世代の多様な人たちを混ぜまくっていたこと。全然違う土地にいるんだけど、それぞれ違う方法で、同じようなことを実現しようとしていました。お互いに、『今日聞いたこと全部パクりたい!』と言い合っていたのが印象的です。」

「他社と比較したり、数字を追ったりするのではなく、自分たちの経験や趣味嗜好から事業を生み出していく企業のあり方を感じました。『お客様と向き合うのではなくて、同じ方向を向いてる』とか『100年かかると覚悟してやってる』とか、表現や実践の方法は三者三様なのもおもしろかった。」

「『欲しいものは全てここ(地域内)にある』と語ってくれた方がいて、その言葉がすごく響きました。見えにくくなっているだけで、本当はあるんだと。それが見える状態になるように補助線を引き直すのが私たちの役割だという感覚を、共有できたのがよかった。」

「超えなきゃいけないことが多すぎるんだけど、同じ思いを持った仲間が増えてきた感じがします。」

「今までこういうイベントは、インプットで終わることが多かったけれど、今回はまだ全然終わった気がしない。トークセッションの中ですでに次の約束がいくつか交わされていたり、今日が始まりなんですね。」

─クロージングより

私たちは今、「Community Based Companies MAP KYOTO」という名の地図を作っています。コロナ禍で先の見えない中、「私たちが希望の兆しだと感じる地域企業たち」を集めた京都市の地図を作りながら、個性豊かな各社のビジネスに触れ、何度も励まされました。そして、今回の「Community Based Companies Forum」では全国から力強い声が届きました。京都という土地で、様々な文脈で育まれてきた知恵が一つに合わさり、大きなうねりを生み出していく。その最中において、大切な場面を目撃したような気持ちになりました。ぜひ、2020年に産声をあげた「Community Based Economy」のwebサイトもご覧いただければと思います。
https://community-based.org/

※フォーラムの記録動画を、Community Based Economyのwebサイトにて一部公開予定です。詳細が決まり次第、ご案内いたします。

最後に、登壇いただいたゲストの方々の活動をご紹介します。皆さん、本当にありがとうございました!


ゲストの方々

瀧内 貫氏 長野県立大学 ソーシャル・イノベーション創出センター|長野
https://www.u-nagano.ac.jp/cooperation/csi/
野崎 恭平氏 薩摩リーダーシップフォーラムSELF/(同)むすひ|鹿児島
https://self-kagoshima.org/
三浦 卓也氏 (株)フェリシモ/(株)hope for/OPEN TOWN 厚真(一社)|北海道
https://www.hopefor.co.jp/
内田 友紀氏 Re:public Inc|福井・東京
https://re-public.jp/

風間 教司氏 (有)風間総合サービス/日光珈琲|栃木
http://nikko-coffee.com/
須部 貴之氏 薩摩リーダーシップフォーラムSELF/(株)KISYABAREE|鹿児島
https://self-kagoshima.org/
菊地 徹氏 株式会社栞日|長野
https://sioribi.jp/

山崎 大祐氏 (株)マザーハウス|京都
https://www.mother-house.jp/
河村 翔氏 Dari K(株)|京都
https://www.dari-k.com/
中須 俊治氏 (株)アフリカドッグス|京都
https://afurikadogs.com/

古川 理沙氏 (株)そらのまち|鹿児島
https://www.solanomachi.com/
成田 智哉 氏 マドラー(株)|北海道
https://muddler.mystrikingly.com/
丑田 俊輔氏 ハバタク(株) /シェアビレッジ(株) |秋田
http://habataku.co.jp/

比屋根 隆氏 (株)うむさんラボ/(株)レキサス|沖縄
https://umusunlab.co.jp/
岡村 充泰氏 (株)ウエダ本社|京都
https://www.ueda-h.co.jp/
三木 貴穂氏 (株)ベネッセホールディングス|東京・直島
https://www.benesse-hd.co.jp/ja/about/naoshima.html

新井 直彦氏 松川町 役場まちづくり政策課|長野
https://www.town.matsukawa.lg.jp/
松山 圭介氏 水俣市 産業建設部経済観光課|熊本
https://www.city.minamata.lg.jp/
五味 孝昭氏 京都市 産業観光局 地域企業イノベーション推進室|京都
https://www.city.kyoto.lg.jp/

木村 まさし氏 (株)オールユアーズ|東京
https://allyours.jp/
西濱 萌根氏 (株)NINI|京都
https://niniroom.jp/
藤本 翔氏 (株)Casie|京都
https://casie.jp/

写真・文:柴田 明(SILK)
イベント主催:京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)|一般社団法人リリース  


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