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June 06.2017

絶対条件は、あきらめずにやりつづけること。「モテる公務員」への道筋が明かされた「ソーシャル・イノベーション・サミット2016 in KYOTO」イベントレポート(後編)

2016年 8月27日。京都にある同志社大学・烏丸キャンパス至高館にて、「ソーシャル・イノベーション・サミット2016 in KYOTO」が開催されました。

「ソーシャル・イノベーション・サミット」は、地域や社会における課題に対し、革新的なアプローチで効果的・持続的な活動を行っている方々にお集まりいただき、東京一極集中の状況打破や、地方創生を推進するネットワーク形成の促進を目指す取り組みです。

2回目の開催となる今回は、地域や企業など多様な人々を巻き込みながら町の活性化に取り組む、全国の「モテる公務員」が京都に集結。先立って、オープニングの模様をお伝えした前編(記事はこちら)に引き続き、この記事では第1部パネルディスカッションの模様をお届けします。

絶対条件は、あきらめずにやりつづけること。「モテる公務員」への道筋が明かされた「ソーシャル・イノベーション・サミット2016 in KYOTO」イベントレポート(後編)

元ナンパ師のプレゼンはエンターテインメント!

京都市ソーシャルイノベーション研究所アドバイザーで、モデレーターを務める井上英之さんに促され、長野県塩尻市役所職員で、元ナンパ師の異名を持つ山田崇さんのお話からパネルディスカッションはスタートしました。

こちらが山田崇さん。赤いパンツがトレードマーク

山田崇さん。赤いパンツがトレードマーク

商店街の活性化、移住定住促進、シティプロモーションなど、さまざまな活動が評判を呼び、年間100回もの講演をこなす、全国から引っ張りだこの山田さん。お話の始まりは元ナンパ師らしく、「ナンパの話ちょっとします。仕事で大切なことは、すべてナンパから学びました!」というなんともユニークなものでした。

山田さん:ナンパ師としての条件は四つあります。一つは、女性に断る権利を与えること。これが私たちのルールでした。クレドです(笑)。二つ目! つかまるまでやめない! だから朝5時までやっていました。三つ目! 仲間とやる! ペナントレースなんです、140試合あって80勝てばいいんです。四つ目! ヒーローはいつも違う! 仲間と一緒にやっているので、今日の私はベンチでも、仲間が勝てばいい。こんなことをやっていました。

のっけからテンポ良い山田さんのユーモア溢れたプレゼンに、会場のボルテージも上がり始めます。そして、話題はパネルディスカッション後に行われる分科会についてへ。

山田さん:今日はこんな話がしたいと思っています。もう行政は待たない! 個人でできることから。地域を超えて。今日もそう! それと、共感できる仲間と一緒にやろう! ぜひそういう仲間ができる分科会をしたいなと思っています。

そして、「僕は喋りすぎるので、いつもこの時間を入れています…」という言葉とともに、ここまで軽やかだった口調を一変。「大切なみなさんの時間をいただいているので、最後必ず行動していただきたい」と、丁寧な語り口で山田さんは続けます。

山田さん:ぜひ、一人ひとりが当事者として、自分でできることに気がつける、そんな時間にしていきたいなと思います。「準備ができていない」「仲間がいない」「前例がない」「お金がない」なんて言っていると、困っている人がどんどん亡くなっていくだけ。今日も一人ひとりと向き合いたい。プレゼンの時間を10分いただいているんですが、10分だとは思っていません。250人と10分、41時間をいただいていると思っています。

19年前から公務員をしている山田さん。「えんパーク」という市民交流センターを担当したときに、「自分が市民活動をしたことがないのに、市民活動支援をしなければならない」という状況に違和感を覚えたことが、時間外の活動を始めるきっかけだったといいます。

山田さん:自腹で商店街の空き家を借りて、「nanoda」という名前をつけて、何かしたい若者が小さくスタートできる場所をつくったら、若者が6人移住してきたんです。そうしたら市役所で移住・定住の仕事を任されました。

元ナンパ師だと発信したら、年間100回講演に呼ばれるようになりました。すると市役所にシティプロモーション課ができて、「プロモーションしてこい」と言われるようになりました。業務時間外に大切だと思ったことをちょっと始めてみたら、それが今の仕事につながっています。

山田さんは、現在5軒の空き家をなんと38,000円で借りているそう。3階建ての空きホテルの写真を見せながら、その目的は「ただ開けてるだけです」と笑います。

山田さん:いいんです(笑)。若者に「やれやれ」言う前に、大人が軽くやってみせましょう。僕は「泥水に飛び込んでも死なない。だからみんな来いよ」と言う最初の人になりたいんです。さらに言えば、「ここまでやってもクビにならない公務員日本一」になりたいと思ってます。

さらに、自らの“地方創生の仮説”として、山田さんは次のように訴えます。

山田さん:僕は今41歳ですが、僕より年上の方は何かするよりも、お金を出して若者を応援しましょう。「ちょっとやってみなよ、俺が責任を持つから」って。そういう人が増えて欲しいなと思っています。

2011年、塩尻市の市政50周年の年、山田さんは次の50年を考える勉強会を役所内で始めました。その中で、商店街をどうするか改めて考えるも、結論は「商店街に住んだことがないので、よくわからない」だったといいます。そこで、山田さんは自ら空き家を借りることから始めます。

山田さん:空き家と関わる際に一番大切にしているのは掃除です。大家さんと一緒に空き家を掃除して、綺麗になったその場所で大家さんと食事をする。そして、「昔の商店街はどうでした?」「なんで閉めてしまったの?」「ここをどうします?」など、いろんな話をします。

そうしているうちに、「山田くんたちなら使ってくれていいよ」と、大家さんの気持ちが変化していくことがあるそうです。

山田さん:実は空き家って、空いてないんです。きれいになった空き家を見ながら、大家さんに「これからどうしますか?」と問いかける僕の活動は、「じっと何が起きているのか見る」ことを時間外でしようと思ったのかなと、今思います。

そして、「想像で施策をつくっちゃだめ!なのかな?」と力強く、少し控えめに会場に訴え、「よくわからないからとにかくやってみる、それが僕の第一歩でした」と、なんとも盛りだくさんの10分プレゼンを、最後は爽やかに締めくくりました。

山田さんのプレゼンテーションを受けて、モデレーターの井上英之さんは、「空き家に関わることで見えてきた気づき」について、山田さんに問いかけます。

対する山田さんの答えは「空き家を開けると不思議と愛着が湧いてくる」「空き家だけでなくそこにいる素敵な人についての発信が大切」「空き家を閉めている理由は30軒あれば30通りある」といったものでした。

井上さん:空き家のことを人はネガティブに捉えがちですが、一歩離れて見てみると、空き家というのはリソースの一つで、組み合わせを変えることでソリューションになる、そんなことを山田さんは実践されているのかなと思いました。

あきらめずに自分のやり方を貫けばいい!

続いてお話をされたのが、佐賀県庁の「モテる公務員」、円城寺雄介さんです。円城寺さんは、佐賀県政策課と消防防災課、そして法務私学課を兼務。さらに、県庁以外の仕事として「官民協働プラスソーシャルアクションセンター」という組織の共同代表や、ドローンの活用研究・実用化を進める社団法人のCEO(最高経営責任者)なども務めています。

こちらが円城寺雄介さん。『県庁そろそろクビですか?』という書籍の著者でもあります。

円城寺雄介さんは『県庁そろそろクビですか?』という書籍の著者でもあります

円城寺さんの名が世間に広まるきっかけになったのは、佐賀県のすべての救急車両に「iPad」を配備し、救急医療現場の情報共有と可視化を実現した事業でした。

それまで、患者を乗せた救急車では、携帯電話で片っ端から電話をかけて、搬送先を探すというアナログな方法がとられていました。しかし、そのことによって、病院同士がお互いの状況を把握できずに、他の病院に患者を押し付けあう、いわゆる「たらい回し」が起きてしまっていたのです。

円城寺さん:人は、自分のがんばりは見えても、他人のがんばりはなかなか見ることができません。どこの病院も忙しいので、「どこががやるだろう」と、患者の受け入れ拒否が起きてしまっていました。「iPad」の配備は、この課題を可視化して、みんなで解決していこうということだったんです。

そんな円城寺さんが医務課に配属されたのは2010年のこと。意外にも当時の志はとても低かったといいます。

円城寺さん:おそらく役所も企業の皆さんも同じだと思いますが、私たちは給料をもらって仕事をしている以上、「やりたい仕事」をやらせてもらえることなんて、まずありません。「やりたい仕事」をやらせてもらっているのであれば、むしろお金を払わなきゃいけない、というのが持論です。何が言いたいかというと、私が医務課に配属されたときも、特段やりたいと思っていなかったということです。改革を起こしたいとか、そういった高い志はまったくありませんでした。

では、なぜ円城寺さんは救急車両への「iPad」配備を実現できたのでしょうか。

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円城寺さん:まず、救急車で運ばれたこともない私が、どうやったらいい仕事ができるのかと考えました。そして消防署に、救急車に乗せてくれないかと頼んだのですが、「君は素晴らしい!ぜひ乗ってくれ!」と、言われるわけもなく、こっぴどく怒られて追い返されました(笑)。でも、そこからのスタートだったんです。

読者の皆さんも、現場の人が話を聞いてくれない、上司が首を縦に振らない、といった壁にぶつかった経験があるのではないでしょうか? ただ、円城寺さんはそのときに、相手を説得できない自分が悪いと考えるようになったそうです。

円城寺さん:もちろんそういう相手に腹が立ったりする気持ちはあります。でも相手に共感してもらえないのは、自分のせいなんですよね。逆に、上司の引っ掛かりを紐解いていけば、私たちは前に進めるわけです。「iPad」のことも、知事のマニフェストにはなかったし、県の総合計画の中にも「救急医療現場の情報共有と可視化をする」なんて、一文も書いていなかった。それでも、ひとつひとつ説明を重ねてクリアしてきました。

そして円城寺さんは、自分と同じように壁にぶつかっている人に、「あきらめずにやりつづけよう」「人には個性がある」という二つのことを伝えたいと話を続けます。

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円城寺さん:僕には、山田さんのようなナンパで鍛えた話術はありません。僕は山田さんとは違うやり方でやっているわけです。つまり、皆さんも、皆さんのやり方で、いろんな手を使って、あきらめずにやり続けたらいいんだということです。

「iPad」も一年間かかりましたが、逆に言えばたった一年で、電話で患者の搬送先を探していた救急車に「iPad」が配備されて、どこの病院にどんなドクターがいて、今どれくらいの患者さんが搬送されているのかが可視化されたんです。このことによって、佐賀の状況も大きく変わりました。

最後に、「一見とんでもないことをやっているように見えるかもしれませんが…」と前置きし、円城寺さんは「本来持っている仕事をコツコツ積み上げていくこと、それを皆さんとやっていくことで、世界は変わるのだと思います、今日はよろしくお願いします」と、力強い言葉でプレゼンを締めくくりました。

そんな円城寺さんの話を受けて、井上さんはまず、「実際に救急車に乗ってみて気がついたことはなんでしたか?」と、円城寺さんに問いかけます。

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円城寺さん:これだけ世の中が便利に変わっているのに、命を救う現場が、携帯電話で病院に電話をかける以外の方法を持っていないことに驚きました。なんで変わっていないんだろうって。でもそれは、私たちが「仕組みがない」という理由で現場の人たちに負担を押し付けていたからなんだと気がつきました。

現場の人たちはもっといい仕組みがあれば、もっとできるのに、自分たちには携帯電話しかないから、その仕組みの中で必死になってがんばっている。その光景はとても印象的でしたね。

続けて、井上さんは円城寺さんに、「iPad」を導入するときの周りの様子と、スムーズにことが運ばなくてもやり続けているのは何故なのかという質問を投げかけます。

円城寺さん:改革や変革を求められている現場はただでさえ努力しています。困っているということは、窮乏していて大変だったりします。そんなところに新しいものを持ち込もうとしたので、当然拒否反応が強くありました。

にも関わらず、円城寺さんがその状況を乗り越えることができたのは何故なのでしょうか。

円城寺さん:僕は心が弱い人間だから、この事業で名を売ろうとか、目的が私利私欲だったとしたら、怒られるだけでやめちゃうと思います。でも、私利私欲じゃないので文句を言われても、ありがたいなと思える。だって、頼んでもいないのに、やろうとしていることの欠点を指摘してくれるんですよ? 捉え方を変えられれば、怒られるってすごくラッキーですよね。

円城寺さんの話に大きく頷きながら、井上さんは「何が課題がわからないまま続けることは難しいけれど、問題がわかれば、それさえ解決すれば次に進めるんですね」と、問題発見の重要性を会場に伝え、次に大室さんにコメントを求めます。

流れるように進むパネルディスカッション

現在、京都市ソーシャルイノベーション研究所の所長を務めている大室さんも、20年前は公務員でした。大室さんは、「今よりも、もっとかたい世界だった」と当時を振り返ります。

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大室さん:法律で決まっていること以外を口にすると、途端に表情が変わって湯けむりが立つような人ばかりで、たくさん僕も怒られました。議員さんと仲良くすると怒られたりして、このシステムをいかに変化させていくかで悩んでいた時期もありました。

そんな中、大室さんには一つの問いが生まれたといいます。それが、「なぜ行政は存在しなければならないのか」というものでした。

大室さん:ずっと考え続けていますが、その問いへの答えはまだ見つかっていません。だからこそ、この研究所を通じて、行政のニュータイプを一緒につくれないか模索するさまざまな社会実験をさせていただいています。そしてこれからは、その答えをみんなで考えたいと思っています。

大室さんのシステムという言葉を受けて、井上さんは話題を「関係性」に移します。

井上さん:システムを変えるという言葉があるけれど、システムとは関係性のことなんですね。役所のシステムを変えたパネラーのお二人は、そういった関係性を役所の中でもつくっているのではないかと思うのですが、いかがですか?山田さん。

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山田さん:そうですね。理解のない上司に対しても、最初にギフトするというのはやっていますね。「よくわからないけど、一度山田にやらせてみようか」と思ってもらえるように。

例えば、誰よりも早く職場に行くというのを3ヶ月やってみる。コーヒーを入れて待っている。偉い人はそれを必ず見ています。何もやらないよりは、「まあよくわからんけど、一回やらせてみようか」となる可能性は高いですよね。ナンパも同じです。女性は上手に誘われたいんです(笑)。

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円城寺さん:私もありがたいことに、いろんなところで、いろんな方々とお話しさせていただいていますが、公務員の皆さんは本当に優秀で熱い人も多いのですが、自分の中で「これはやっちゃいけない」という制限をかけてしまっている部分があるのではないかと思います。

ある意味、私が本を出したのも人体実験で、ここまでやってもクビにならないかどうか、というギリギリをいっているんですね。

山田さん:ストレッチですよね。これ以上やったら折れるのかな?という。

円城寺さん:本当にそうですよね。そして、国の会議などにも出させていただくのですが、国の役人さんなどは、それはもう優秀なのですが、現場はわからないんですね。現場がわかるのはやっぱり地方の公務員なんです。ですので、きっかけがあれば化けるのは間違いなく地方であり、変化は地方からこそ起きると私は思っています。

そして井上さんは最後に、会場に向けてこんなメッセージを送りました。

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井上さん:皆さんいかがでしたか? お話を聞くだけではなく、「これとこれは似ている」とか、「これのこの部分はこっちに使える」とか、「民間企業だとこうだ」とか、類推すること、アナロジーを働かせることで私たちは何からでも学ぶことができます。進化ができるんですね。今日の話から類推して考えていく先に、本質があるのではないかと思います。

また、このところ「コレクティブ・インパクト」という言い方をしますが、協働で、いろんな人が関わってより大きな社会的インパクトを生み出していこうという潮流が世界にはあります。

そのときに、行政は1プレイヤーです。企業・学校・議会・地元の事業者など、それぞれが何をして、より大きな変化を深いところで起こせるか、それをどうデザインし、対話の中からつくっていくかが大きなテーマとなっています。

そういったものを、この後の分科会で皆さんが体感して、次の一歩を踏み出すきっかけになればと思います。それでは、パネラーの皆さん、ありがとうございました。

こうして、第1部のパネルディスカッションは閉幕。第2部の分科会も大いに盛り上がりを見せました。

今でこそ型破りな印象を持たれるかもしれませんが、山田さんの取り組みも、円城寺さんの取り組みも、その始まりは「わからないから体験する」という、とても基本的なものでした。

しかし、お二人とも、実はおろそかにされがちな「体験する」という行為から得た気づきをもって、丁寧に人との関係を紡ぎながら、ネガティブをポジティブに変えながら、あきらめずに続けてきたからこそ、その歩みが大きなものに変わっているのだと思います。

地域や社会の課題に対して、自らも取り組んでいきたいと考えている方はぜひ、その思いを身近な誰かに話してみてください。いつの時代のソーシャル・イノベーションも、必ずそういった誰かが始めた小さなアクションから生まれているのです。

平成29年度は仙台市での同様のイベントが開催される予定です。もしも自らの関わる地域でサミットの開催にご興味のある行政の方がいらっしゃいましたら、お気軽にSILKまでご連絡ください。


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