SILKの研究
Aug 5.2021

メンズのエシカルファッション|村上 雅敏|(有)シサム工房

ファッションにおける「エシカル」というキーワード。女性誌では一般的になってきましたが、男性誌ではまだあまり目にしません。「エシカル(ethical)」とは、直訳すると「倫理的な」という意味です。消費者庁によると、エシカル消費とは「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」。SDGsではゴール12「つくる責任、使う責任」に関連する取組です。

今回のSILKの研究は、これまであまり注目されてこなかった男性のエシカル消費について、有限会社シサム工房の村上さんに語っていただきます。新型コロナウイルスによる消費者への影響とともに、エシカルなメンズファッションのあり方を探っていきます。

過去の取材記事はこちら↓
「フェアトレード」を通じて、暮らしを見つめ直す機会を育む「有限会社 シサム工房」【これからの1000年を紡ぐ企業】

メンズのエシカルファッション|村上 雅敏|(有)シサム工房

[目次]

1. コロナの影響は、アジアのものづくりだけでなく消費者の意識にも
2. 男性の選択肢を増やす。男性がエシカルを選ぶ理由を仕立てていく
3. 企画から販売まで2年。皆が幸せになるプロダクトを

1. コロナの影響は、アジアのものづくりだけでなく消費者の意識にも

シサム工房は、アジア6ヵ国・13団体のNGOと連携し、生産者の自立支援を目的としたビジネス「フェアトレード」を行っています。レディースの洋服や雑貨を中心に、商品を企画・輸入し、直営8店舗とオンラインストアで販売。全国の小売店舗への卸もしています。

シサム工房のビジョンは、「お買いものの力で 思いやりに満ちた社会をつくる 担い手となる」。
フェアトレードを中心に、作り手・売り手・買い手・社会・地球環境の「五方良し」を目指した商品やサービスを広め、貧困・児童労働・環境問題など社会課題の解決を目指しています。

これまでは、レディースのファッションアイテムや雑貨をメインに取り扱ってきましたが、2021年秋冬アイテムより「エシカルメンズ」と称して、男性向けのファッションアイテムを展開します。その背景には、新型コロナウィルスの影響による「SDGs」「エシカル」への関心の高まりがあります。

2020年に世界的な感染が起こった新型コロナウィルスは、私たちシサム工房、そして、アジアのパートナーたちにも甚大な影響を及ぼしました。2020年4月には日本国内で緊急事態宣言が発出され、シサム工房の直営店は8店舗すべてが休業。売上も著しくダウンしました。

アジア各国のパートナーの状況は、更に深刻でした。ロックダウンにより厳しい行動制限が行われ、オフィスや作業場に行くこともできず生産はストップ。政府からの補助はなく、生活物資の調達にすら苦慮する日々が続きました。各国から日本への物流も止まってしまいました。世界的に経済が低迷するなか、フェアトレード・パートナーへの注文は激減し、彼らの暮らしに大きく影響が出ていました。会社として生き残り、パートナーへの注文を継続して彼らの生活を支えていけるよう、今現在も格闘しています。

コロナ禍では日本の消費行動にも大きな変化があり、「SDGs」への注目が急速に高まりました。持続可能な暮らしを目指すならば、環境や平和、人権への配慮なしに前に進むことは出来ないという感覚が、無意識に広がってきたのかもしれません。私たちは、フェアトレードを「貿易の目的が、『お金』でなく、『人』であること」と定義しています。私たちが大事にしている「通常の経済のサイクルに入れない人たちとつながること」の重要性を、今回のコロナ禍で体感しました。

2. 男性の選択肢を増やす。男性がエシカルを選ぶ理由を仕立てていく

環境や人権にやさしいエシカルなプロダクトというと、今まではどちらかと言えば女性の関心が強い分野でした。近年はエシカルやSDGsに関心を持つ男性も増えてきていると思いますが、女性向けのプロダクトに比べ、男性向けは購入の選択肢が非常に少ない状況です。チョコレートやコーヒーなどの食品ぐらいしか生活に取り入れられるものがない、という方も多いと思います。

メンズファッションにも、環境や平和、人権に配慮した消費の選択肢を作りたい。そんな想いで、エシカルメンズをスタートしました。

私自身、昔からファッションが好きでした。中学時代からデザイナーズブランドに憧れ、死ぬほど緊張しながらブティックに足を踏み入れ、LEVI’Sの501を糊付けの状態で購入し、はいたままお風呂に入って体にフィットさせたり。アメリカ村でレアな古着を探したり。そんな私ですが、今、自分の感覚にフィットする洋服、欲しいと思える洋服をなかなか見つけられないのです。

求めているのは、ものづくりの姿勢に共感できるもの、ストーリーがあるもの、人の熱が感じられるもの。

テレワークやワーケーションが当たり前になりつつある今、働き方は多様になってきました。仕事でもプライベートでも同じ価値観で活動する人が増え、どんどん境目がなくなってきているように思います。

「エシカルメンズ」は、リラックス出来るカジュアルスタイルでありながら、きちんとした印象を損なわないように仕上げています。コロゾナッツ素材のボタンだったり、比翼仕立てだったり、襟もとにフラップをつけたり、ベーシックなデザインの中にもギミックを効かせています。

そして、「エシカルメンズ」の証として、”FT”(=FAIR TRADE)マークの刺繍を入れてみました。自然素材やものづくりの温かさも感じられる商品がそろっています。是非、手にとってみてください。日常になじむエシカルファッション。心地よく、そして、少し気分が上がる。そんな洋服です。

3. 企画から販売まで2年。皆が幸せになるプロダクトを共に

「エシカルメンズ」は、実績ゼロからのスタートでした。フェアトレードをビジネスにすることは非常に難しいです。

ファストファッションの場合、生産のサイクルは非常に短く(デザインからお店に届くまで2週間という話も!)、安価で販売するために、賃金の安い国で大量生産されます。一方、シサムのものづくりは、企画から発売まで、ざっと2年かかります。まさに ファストファッションの逆をいく、スローファッションです。

設備の整った大きな工場はありません。使える素材や技術も限られています。しかし、私たちは、効率的に安く作るために工場や作り手を変える、という選択はしません。

長年お付き合いしているパートナー達は、私たちにとって、隣人(=シサム)です。そんなパートナー達との間には問題もよく起こるのですが、そのたびに、あーでもない、こーでもない、と試行錯誤しながら、ものづくりをしています。着る人にとって最高の一着、というよりは、「関わる皆、つまり隣人(=シサム)たちが幸せになる洋服」を目指しています。

「エシカル」や「SDGs」を、勉強や知識で終わらせるのはもったいない。男性も女性も。ヒッピーも、SDGsバッジをスーツにつけている人も。カッコイイね、楽しいね、と暮らしに根ざしていくことで初めて、取組が経済活動として循環します。そんなエシカルなライフスタイルを広めていきたいと思います。

ソーシャルな活動をしている企業が多い京都。京都という街で、社会を良くしていく目的を持つ仲間たちと、つながり、刺激を受け、切磋琢磨しながら、隣人(=シサム)の輪を増やしていきたい。そして、皆が幸せになるプロダクトを作り、販売していきたいと思います。


 


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photo:村上 雅敏
村上 雅敏
有限会社シサム工房 取締役

1970年 広島県生まれ。大学時代に始めて旅したタイにはまり、バックパッカーとしてアジアを放浪。アジアの国の食や文化、手仕事に関心をもつ。縁あってシサム工房に加入、フェアトレードに出会う。シサム工房では、経理、総務、人事、広報と幅広い業務を統括。

フェアトレードを事業として成り立たせていくこと。まだまだマイナーなフェアトレードを広める為に日々奮闘中。

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