COLUMN
Jul 14.2016

【レポート】第6回 イノベーション・キュレーター塾

今回は高津塾長から後期に取り組む内容について御紹介がありました。
テーマは「社会にインパクトを与えることができる革新的なビジネス手法」を生
み出す!です。
今回は、高津塾長が取り組むプロジェクト「イーストループ」のプロセスを学ぶ
ことで、後期の取組内容を理解することができました。後期では,塾生が自ら実践したいと考えるプロジェクトを通して革新的なビジネス手法を生み出すことに挑戦する、アクティブラーニングが内容となっています。
具体的には、①物事の「本質」を見極め、②マイプロジェクトのゴールを設定
し、③課題をブレイクスルーできる革新的なビジネス手法を見出し、④事業計画を作成すること。イノベーション・キュレーター塾を修了すれば,これらの能力を身に付けることができます。
それでは,当日のダイジェストをレポートします。

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【レポート】第6回 イノベーション・キュレーター塾

2月6日、前期最終回となるイノベーション・キュレーター塾が催されました。今回はゲストスピーカーはお招きせず、塾長である高津玉枝さんの事例とグループワークを通してイノベーション・キュレーターとして今後していくべきことを検討します。


■ソーシャルイノベーションの過程

事例の前の全体論として、高津塾長からソーシャルイノベーションの過程についてお話がありました。違和感からの課題・ゴール設定、解決のための手段の選択・実践と、その中でぶつかる壁をブレークスルーするという一連の流れがイノベーションです。

スタートは、課題などという明確なものではなく、もやもやとした感情だと言います。そこから課題へとつなげる訳ですが、このとき重要なのは、深掘りと俯瞰により「これだけは譲れない」という本質を捉える力と、本質全体の中でゴールをどこに設定するかということ。このゴール設定が決まらないと、ぶれてエネルギーも拡散してしまうのです。ゴールを設定したら次は課題解決のための手段を選びますが、このときも俯瞰力が必要だといいます。1つの課題に対して取り得る手段を徹底的に探っていかなければならないからです。しかし、この手段を考える段階で、「これはできない」という壁にぶつかるそうです。そのとき必要になってくるのが、ブレークスルーする力です。そしてこのブレークスルーこそがイノベーションなのです。以上の流れを何回も繰り返して、初めて事業計画書ができると言います。「現象から考えると、あれも無理、これも無理という無理の掛算になってしまう。制約条件をつくっているものは何なのか、視点の多様性を持つことが大切。」

髙津塾長のお話

■イーストループの本質とは?

高津塾長は、東日本大震災後に、イーストループプロジェクトを始めました。被災地の女性が作る手編みのブローチを販売し、売上を彼女らに還元する活動です。その背景には、ネパールの少数民族・タルー族との出会いがありました。ネパールは山国で集落が点在しており、そのような不便なところで誰も産業を興そうとはしません。しかし、タルー族にはオランダからの支援が入っており、子供たちは制服を着て学校に行っているそうです。支援が入っているならいいじゃないか、そう思った高津さんに対して、タルー族の人々が言った言葉が刺さりました。「私たちはタルー族の誇りがあるから、自分たちの力で生きていきたい」―そんな中での震災の経験で、高津さんは被災地の人々とタルー族の人々の状況が似ていることに気が付きます。「仕事は現地になく、物流環境も悪い。このような状況の東北の人たちを何とかしたい」このもやもやした感情から始まったのが、イーストループでした。

ここで、グループワークで2つのことを議論しました。1つは、高津塾長はイーストループの本質をどこに置いたのかということ。そしてもう1つは、その本質を前提として、他にどの様な手段が考えられるか、ということです。イーストループの事例と、今までの話を踏まえると、一体何が見えて来るでしょうか?

塾生の受講中の様子

■イーストループの3つの目的とブレークスルー

グループワークの発表では、イーストループの本質について、「施しではなく、一緒にやること」、「地元で新たなコミュニティをつくること」、「被災地の人々の心の復旧」などの意見がありました。これに対して、イーストループには3つの目的があったと高津塾長は言います。1つは、小さな仕事を通して被災した人々の尊厳を保つこと。もう1つは、仕事を通じて精神的なサポートにつなげること。そして最後に、一般の人たちが商品を通じてサポートできる機会を作り、震災のことを忘れないようにしてもらうことです。イーストループの事業を細かく見ていくと、すべての戦術がこれら3つの目的に結び付いています。手編みは最低限の道具・場所でできますし、商品に署名をすることによって、個人名での仕事に誇りを持ってもらうことができるのです。

また、以上の目的を達成するための他の手段については、現地ツアーや歌・ダンスの教室、自分たちが教え合う一日教室などのアイデアが出ました。これらの手段を具体的に落とし込んでいく段階で、ブレークスルーが必要になります。イーストループの事例では、東北の編み物などやったこともない素人が作ったものを、どう売れるようにするのかということがブレークスルーすべきポイントでした。そのために、まず商品を付加価値の高いブローチにしました。同じ編み物でもエコたわしは100円くらいでしか売れませんが、ブローチなら10倍の1000円でも売れます。そしてデザイナーの方に、「これさえつければ高く見える」タグを頼んだそうです。パッケージは最低限の台紙のみでコストダウンし、商品に作り手の名前を入れることで「作品」にしました。作品なら、1つ1つ違って当たり前、となります。このように、一見不可能に思えることでも、何らかの手段はあるのです。

イーストループのロゴ

■後期に向けて

今回の冒頭、高津塾長は塾生の方々に、後期は塾生の方々それぞれのビジョンの実践に軸足が移るが、ソーシャルビジネスは短期間で簡単にできるものではないから焦らなくていいと言いました。「私たちはビジネスをしているのではない、生きているだけ」というのは、当塾を主催するSILKの大室所長の言葉。ビジネスはあくまで生きる手段だから、自分がこうしたいという生き方がはっきりしていればぶれることはない、と。高津塾長が言うように、もちろん短期間で結果が出る話ではありません。しかし、この先塾生の方々の生き方が、社会をどのような方向に動かすのか、そんな期待感とともに前期イノベーション・キュレーター塾は幕を閉じました。

京都市ソーシャルイノベーション研究所 大室所長

 レポート:SILKインターン生 池田福美


■感想:塾生 阪本純子さんより

最終回を迎えるまでの間に、マイプロジェクトのブラッシュアップの機会も設けていただきましたが、自分の自身の中のモヤモヤ感は整理できないまま最終回を迎えてしまいました。

今回の塾長の事例から、着地がイメージされて進められていること、ブレークスルーした経緯、本質を捉えた全体的なプロセスについての理解が深まりました。そして、何より震災から短期間でプロジェクトを立ち上げ、ブレークスルーをしていくエネルギーの元が、塾長ご自身にとって「自分事」だったということがポイントだと思います。

初回から「俯瞰」ということを学び、ゲストスピーカーからの話から多くのことを学んできました。共通していることは情熱を伴った「自分事」であり、本質を捉え、そこからぶれずに推進していること、でもその方法はまっすぐ一直線に進めるのではなく、様々な仕掛けや手段を使って周囲を巻き込みながらであり、次第に社会に認められることになっているということです。

後期に向けて、前期の学びを活かして、「自分事」としてマイプロジェクトをブラッシュアップしていきます。仲間と突っ込み合うことも楽しみでワクワクしています。


photo:阪本純子
阪本純子
中小企業診断士・小さな企業の人事担当

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