イノベーション・キュレーター塾
Mar 30.2023

イノベーション・キュレーター塾のこれから|京都市長 門川 大作 × 塾長 髙津 玉枝

京都市ソーシャル・イノベーション・クラスター構想のもとで生まれたイノベーション・キュレーター塾は、8周年を迎える2023年、一般社団法人を設立し、一つの事業者として独立します。新しい春の訪れを前に、高津塾長が門川 大作 京都市長を訪問し、卒塾生の活躍や今後の連携についてお話ししました。毎年のように卒塾式に来てくださり、塾生たちに励ましの言葉をかけ続けてくださっている門川市長。この日もあたたかいメッセージをたくさんいただきました。

イノベーション・キュレーター塾のこれから|京都市長 門川 大作 × 塾長 髙津 玉枝

京都市の構想に伴走者の育成が盛り込まれたことは、画期的だと思います

門川: イノベーション・キュレーター塾という先駆的な取組を実施していただき、京都市として心から感謝しております。

髙津: ありがとうございます。とても嬉しいです。イノベーション・キュレーター塾の第1期生の募集は、国連サミットでSDGsが採択された2015年9月よりも前でした。今でこそSDGsやエシカルという言葉が当たり前になり、私たちの取組を評価してくださる方が増えましたが、当時は塾のコンセプトをお話ししてもなかなか理解していただけないことが多かったです。京都市さんがソーシャル・イノベーション・クラスター構想を2014年に発表し、他都市に先駆けてソーシャル・イノベーションの取組を始められたことに、改めて感謝しております。その一環として始まった塾を7期まで続けることができ、計117名もの卒塾生が巣立っていきました。

門川: ソーシャル・イノベーション・クラスター構想からの流れが2018年の「京都・地域企業宣言」にもつながっており、皆さまの着実な取組のおかげで、京都市は国際的な気候変動対策の情報開示システム「CDP Cities」にて2年連続で最高評価のAリストに選定されました。

髙津: イノベーション・キュレーター塾は、既存の組織の中で従来の壁を超えて社会的事業に伴走していく担い手が必要だという課題意識から生まれましたよね。社会起業家を育成する取組は各地で行われていますが、京都市の構想に伴走者の育成が盛り込まれたことは画期的だと感じました。その軸があったからこそ7期に渡って塾が続き、さまざまな領域での化学反応が起こってきたのだと思います。

門川: 地域企業だけでなく、京都では金融機関からも先進的な取組が次々と生まれていますね。従来の枠組みを超えて地域貢献のための業務に挑戦している事例をたくさん聞いています。

髙津: 市長のお話しされた事例の中でも、実は卒塾生が活躍しています。塾で自分の価値観を掘り下げる中で、京都の伝統的な文化を受け継いでいきたいという思いをさらに強くして、社内での新規事業の立ち上げに立候補されたと聞いています。その上司の方にお話を聞いたのですが、入塾前は自分から手を挙げるようなタイプではなかったと言われていました。金融機関の職員の方も毎年塾にもご参加いただき、ただ企業に伴走するだけでなく、上記の事例のように組織のビジョンを具体的に実現するところでも活躍されています。

既存の枠組みを超えてイノベーションを推進する担い手を、組織の中だけで育成するのは難しいですよね。卒塾生には高校の教員もいて、彼は塾生のネットワークを使って、色んな企業に生徒たちを連れて訪問しています。いきなり依頼したら断られてしまうような挑戦でも、塾生同士の関係性があるから実現できますし、その姿を見た他の先生たちも「そんなことできるんや」と意識が変わってきます。そのような動きが徐々に広がって、現場全体が変わってくると思います。

門川: 今、学校では子どもたちがSDGsをしっかり学んでいますね。京都には全国から修学旅行生がやってこられます。修学旅行をSDGsを学ぶプログラムにしていこうと取り組んでいます。修学旅行だけでなく、京都の観光全体としてもCO2ゼロの取組などと連携してSDGsに貢献する観光を目指していきたい。京都から全国に取組の輪を広げていくことが大事だと思っています。

卒塾生の約半数が、運営に関わりたいと手を挙げてくれました

門川: 先日、京都の衣類リユースイベント「循環フェス」に参加し、事業者同士のつながりを感じました。冬の日曜日に1万2千人が集まる日本最大級のイベントになったのは、人と人がつないだネットワークのおかげだと思います。

髙津: 「循環フェス」をはじめ京都のエシカルに関する取組は、どこを見ても卒塾生が何かしらのかたちで関わっているので、頼もしく感じています。今回、一般社団法人を立ち上げて塾を運営していくにあたって、卒塾生117名に協力を呼びかけました。すると、約50名もの卒塾生が、なんらかの形で関わりたいと手を挙げてくれました。こんなことはなかなかないと思います。

門川: 約半数も。素晴らしい。一般的な研修では、受講後に運営に協力しようという動きはあまり起こりません。機が熟し、自走化が可能になったということですね。京都市の新しい動きとして、今年は京都市立芸術大学の京都駅東部・崇仁地域への移転があります。京都市には芸術系大学が6つもあり、それ以外の大学でも芸術を学ぶ学生さんが多い。人口に占める芸術家の人数が政令都市の中で最も多いまちです。ただ、多くの芸術家は十分な収入を得られず生活が苦しい状況にあるため、京都市として「カルチャープレナー(文化起業家)」を増やす取組を実施していきたいと考えています。

髙津: 芸術大学の生徒さんやアーティストの方にも、イノベーション・キュレーター塾に入塾いただけると嬉しいです。塾にはこれまでも、企業や支援機関で働く人だけでなく僧侶や写真家、シェフなど多様な方が集まり、お互いに刺激を与え合い、チャレンジを応援し合ってきました。

門川: いつも卒塾式で塾生の方々のいきいきとした表情を拝見し、心強く感じています。今後もますます発展していかれることと思います。京都市もしっかりと応援していきます。

高津: 京都市の職員の方々にも塾で学んでいただけると、潜在的な思いが引き出されて実現されていくことで、現場の空気が良い方向へ変わっていくと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。

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取材・文:阪本 純子 / 柴田 明(SILK)


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