INTERVIEW
Jan 9.2018

【レポート】トークセッション「イノベーションはワクワクするモノづくりから」

【レポート】トークセッション「イノベーションはワクワクするモノづくりから」

2018年12月19日にMTRL KYOTO(マテリアル京都)で、株式会社enmono(エンモノ)の三木氏より、「イノベーションはワクワクするモノづくりから」という題名で講演を頂きました。前半は三木氏の進める事業の説明からイノベーションの生み出し方の説明があり、後半は実際に瞑想を通して、イノベーションを生み出す経験を体験するワークショップが行われました。内容の一部を感想も交えてレポートします。(レポート:イノベーション・キュレーター塾三期生山路浩之さん)

00. MTRL KYOTO(マテリアル京都)について

今回の講演はMTRL KYOTO(マテリアル京都)で実施されました。MTRL KYOTO(マテリアル京都)は京阪清水五条駅から徒歩2分のところにある クリエイティブワークを必要とする人が利用できるオープンな空間です。1Fにはカフェもあり、とても雰囲気の良い場所です。築110年の古民家を改造した内装は、所々柱も見え、時代を感じさせます。各種工具や3Dプリンター、レーザーカッターなども揃えられており、特にクリエイターにとっては最高の環境だと感じました。今回はこちらの会場で興味深い三木氏の講演を聞くことができ、開始前からワクワクしていました。会場は満席でスタートしました。

01. イノベーションの誤解と日本の危機感

内閣府の資料によると、日本のイノベーションランキングは低下しています。日本では技術革新としてイノベーションを理解されていますが、本来の意味は異なっています。経済学者ヨーゼフ・シュンペータによると「新結合」、クリステンセンは「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」といいます。
大企業ではマーケティングに膨大な費用と時間をかけますが、失敗することが多々あります。「中小企業にはそういった費用や時間はかけられないし、する必要もない。」「経営者が本当に作りたいものを作ればいい。外に頼むのではなく、お金をかけずに自社工場の範疇の中ではじめることが大切。」と三木氏は述べています。では、中小企業をはじめ日本企業の救世主となりうる三木氏が提案する内的イノベーションとはどういったものでしょうか。

02. 内的イノベーションとは

世界では、多くのイノベーションの事例があります。IoT×植物や、自立型×ドローンなどです。これらはGoogleの画像検索で多くの写真が出てくるように、世界的にも多くの人が取り組む市場、いわばレッドオーシャン市場に存在しています。外にある情報からイノベーションを生み出そうとするので、Me too(僕も)イノベーションと三木氏は呼んでいます。これに対比して、内的イノベーションがあります。人の心にある情報(自分のうちに秘めた記憶、想い、経験など)×自分のスキルで全く新しいものが生まれる考え方です。はじめから市場性を考えるのではなく、経営者自身が心からワクワクするものを作る。これがイノベーションにつながっています。三木氏が開催するzenschoolの受講生のバネ工場の社長さんは小さなバネで龍を作りました。また、手術中の足腰の負担を軽減させる補助具の開発にも成功しています。それでは、題名にもあるマインドフルネスはどういったところに用いるのでしょうか。

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03. マインドフルネスをどのように使うのか?

マインドフルネスは昨今欧米を中心に注目されている人間の集中力を高める方法です。三木氏は内的イノベーションを生み出す方法として、マインドフルネスが有効と述べています。しかし、一般的な集中力を高めるために用いるのではなく、創造性を高めるために使用しています。瞑想によって創造性が向上するという研究結果も報告されています。「悟りは脚下にあり」という禅の言葉があります。自分のこれまでの仕事を振り返り、深掘りすることで本当の価値あるものが取り出せるという意味ですが、まさに内的イノベーションは、この禅の言葉通りの内容です。Metooイノベーションに比べて、内的イノベーションは作る時間はかかりますが、製品のクオリティーは高くなる傾向があります。

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04. マインドフルネス瞑想を体験する

講演会の後半には実際に瞑想の体験もありました。瞑想をすると、今まで聞こえていなかった音が聞こえるようになります。コップに水を注ぐ音、壁が軋む音、車が通る音、鼻をすする音などが聞こえてきます。また、自らの過去の経験や情景が目の前に思い出されてきます。椅子に座りながら出来る瞑想法と、内的イノベーションを生み出すためのワクワクトレジャーシートを以下に示します。このワクワクトレジャーシートは、先ほどのバネの恐竜を開発した中小企業の社長さんによるものです。瞑想をしながら、自らが幼少のころにワクワクしたことを縦軸に記載していき、横軸に自ら持っているスキルや技術、リソースを示していきます。交点がイノベーションにつながるかもしれないダイヤの原石となります。まるで、今はまだ見ぬ宝物を探すような気持ちで行います。

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05. 大企業でどのように活かすか?

中小企業ではうまくいっているけど、大企業ではうまくいかないのでは?そんな疑問が頭をよぎりましたが、三木氏は大企業でも実績が出ていることを説明しました。昨今は大企業でもモノが売れない時代で、イノベーションに注目し、ハッカソンやアイデアソンが盛んになっています。しかし、大企業の場合、多くが抵抗勢力や売れないなどの理由からすぐにはスタート出来ません。zenschoolの研修では同企業から複数人の受講生が参加するので、卒業生同士が協力することで、予算を勝ち得た事例もあります。「ワクワクトレジャーシートで導き出された内容は自分の内面から掘り起こされたものなので、中々諦めません。」と三木氏は語っています。

06. クラウドファンディングの重要性

クラウドファンディングは昨今急速に成長している予算獲得のツールでありますが、zenschoolの卒業生には、クラウドファンディングで販路が生まれた事例もあります。クラウドファンディングで掲載された製品から当社の技術力が示され、他社から引き合いがきたり、優秀な人材の採用に結びついたりした事例もあります。クラウドファンディングは昔では考えられない方法でありますが、今の時代にあった内容であり、利用しない手はないといえるでしょう。

07. 失敗はないのか?

こんなにうまくいった事例ばかりを聞くと、失敗はないのでしょうか?zenschoolでは研修後のフォローアップの仕組みも確立されています。月に一回テレビ会議形式で、卒業生から進捗を伺い、相談やアドバイスにのっています。私も研修受講後には、モチベーションを上げることができますが、それが長続きしないことが多いです。こういったフォローアップがあれば、思い切って参加してみることができますね。

08. 最後に

三木氏には約二時間にわたって自社の取り組みから、瞑想の体験まで説明して頂きました。三木氏の丁寧に説明される姿からは想像できないような、内面からにじみ出てくるようなエネルギーを感じることができました。禅に関わっている方々からは外に答えを求めるような単純なものではなく、内面にある自信がみなぎっているように感じました。ものづくりに関わるものとしては、稲盛名誉会長がおっしゃる「手の切れるような製品」を生み出すためには、身も心も健康で、エネルギーがみなぎっていなければならないと感じました。約二時間では到底理解できないことも多くありましたが、マインドフルネス瞑想によるものづくりの可能性を大いに感じることができました。

* 株式会社enmonoからのお知らせ *
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photo:山路浩之
山路浩之
京セラ株式会社 中央研究所、イノベーション・キュレーター塾3期生

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