COLUMN
January 01.2017

コラボbox記念トークセッション 参加者レポート|2016年8月25日(木)IKEUCHI ORGANIC×坂ノ途中

コラボbox記念トークセッション 参加者レポート|2016年8月25日(木)IKEUCHI ORGANIC×坂ノ途中

8月25日(木)、京都市ソーシャルイノベーション研究所イノベーション・キュレーター山中はるなのコーディネートにより、IKEUCHI ORGANIC株式会社代表取締役池内計司氏と株式会社坂ノ途中代表小野邦彦氏によるコラボbox記念トークセッションが開かれました。

このイベントは、今年4月に京都市の「これからの1000年を紡ぐ企業認定」第一号企業に認定されたる両社のコラボによる「食べる野菜×食べない野菜セット」の販売を記念して開催されました。当日は、IKEUCHI ORGANICのタオルや坂ノ途中のお野菜に囲まれながら、それぞれの事業紹介、経営者としての日々の苦労、野菜やタオルに対するこだわりがふんだんに散りばめられた1時間30分となりました。本コラムでは、お二人のトーク内容を中心に、当日の様子をお届けします。

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①二人が作りたい持続可能な社会

冒頭は、それぞれの事業紹介から始まりました。この二社が「これからの1000年を紡ぐ企業認定」に象徴されるような持続可能な社会を目指す事業を何故始めたのかが説明されました。

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「未来からの前借りで成り立っている今の農業。それをやめよう」(小野)

まずは、小野氏による坂ノ途中の事業説明です。坂ノ途中は、環境負荷の小さな農業に挑戦する新規就農者や若手農家と提携し、農薬・化学肥料不使用で栽培された農産物の販売を行っている会社です。販路はインターネット通販、東京と京都で展開している直営店舗、飲食店や小売店への卸販売など。その特徴は、約100軒いる提携農家の9割が新規就農者であること。農地条件などの影響により生産量が少量不安定になりがちな新規就農者をネットワーク化し、何を・いつ・どれぐらい作るから一緒に考えることで、一軒一軒の収穫は不安定でも、全体としてはまとまった数量の作物を安定供給できる体制を作っています。多くの農家から仕入れることで、扱う野菜のバリエーションも豊富になり、独自性の高い商品を提供できているそうです。

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元々、実家で栽培された野菜を食べて育ち、また大学時代、循環型社会と称されるチベットに行った経験から、農業が人と自然の結び目になっていることを感じていたと言う小野氏。しかし、小野氏によれば、今の農業は、農薬や化学肥料といった自然の外から持ち込まれる便利なツールへの依存によって、環境への負荷を貯めている現状があるそうです。

いっぽうで、いま、環境負荷の小さな農業を志す人は増えています。情熱を持って農業への一歩を踏み出した彼ら・彼女らの作る野菜は「とてもおいしい」と小野氏は語ります。しかし、多くの人は販路を見つからず、続けられずやめてしまうのだそう。小規模で安定した生産量を確保するのが難しい新規就農者は、野菜を流通させる企業から「付き合いにくい」と思われてしまうのです。そこで、坂ノ途中は、少量不安定・だけど質の高い野菜を販売できる仕組みを作ることで新規就農者を増やし、持続可能な社会づくりを目指そうとされました。

 

「遺伝子組み換えで作られているタオルを赤ちゃんが舐めてもOKなんて言えないじゃない」(池内)

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一方、IKEUCHIは、100%オーガニックコットンで作られたタオルブランドです。事務所や工場の電力は、風力発電、廃水は世界一厳しいとされる瀬戸内海の排水基準をクリアする浄化施設を設置するなど、徹底的に環境に配慮されたタオルブランドを築いてきました。

元々このオーガニックコットンによるタオル作りは、池内氏自らの「ええかっこしい」で始まった前身である池内タオル株式会社の一事業に過ぎなかったと言います。つまり、元々オーガニックにこだわっていたわけではないのだそうです。

しかし、1999年頃から、池内氏は原料となる綿製造に関する問題意識を持ち始めます。それまでも、綿が枯葉剤を使って収穫されていることを問題視すれば、すぐに業界団体から過度な不安を消費者に煽るなと言われたそうです。さらには遺伝子組み換えによる製造過程が常態化してしまっている業界構造を知る。

以降、池内タオル株式会社は、徹底的に環境に配慮した独自のモノづくり路線を突き進みます。2000年に業界初のISO9001を取得。2002年には、中小企業初の風力発電100%の工場の稼働を開始させ、同時に環境に精通したNYホームテキスタイルショーにてグランプリを受賞。2013年に、全製品赤ちゃんが口にしても安全な国際認証「エコテックス・クラス1」を取得。そして、2014年には、社名をIKEUCHI ORAGANICに変更しました。2015年には、食の安全の国際規格であるISO22000をテキスタイル業界で初めて取得。創業今では120周年を迎える2073年までに赤ちゃんが本当に食べられるタオルを目標に掲げ事業に取り組んでいます。

 

②安心・安全を担保するための「信頼」関係

トークセッションは、当日の朝から小野氏への質問を考えていたという池内氏の疑問に答える形で進んでいきます。

 

「ISO22000であんな規制をやるということは食品製造現場では相当危なかっしいものをギリギリのところで使っているのではないか」(池内)

これは、2015年末にISO22000の国際規格を読み込んだ時の感想を述べた池内氏の言葉です。池内氏は、日本産の農産物やタオルだったら暗黙に安全と思いこんでいる人が多くいることに警鐘を鳴らします。

この池内氏の問題意識に対して、小野氏は安全を考える前に野菜が工業製品のように扱われていることに問題があることを説明してくれました。

 

「野菜やお米など、農産物は生き物で、個性のあるもの。野菜と一緒に、自然の手触りも届けたい」(小野)

坂ノ途中では、集荷した野菜の品質や状態を一つずつ確認する泥臭い作業を大事にしています。それは、出荷場を「畑の延長線上」と捉え、土や自然から切り離された野菜「だけ」ではなく、畑の息遣いまでもお客さんのところへ届けたいと思っているから。「自然の手触りを少しでも感じてもらえたら」そう願いながら、一つ一つの野菜の個性と向き合っているそうです。野菜は均一なものでも無機質なものでもなく、生き物なんです、と語りました。

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「結局、誰を信じるかという問題なんです。僕らは認証マークではなく、この人に騙されたらしょうがないかと思えるような農家の生き様を信頼する。」(小野)

もう一つは「これ面倒くさいんやけどなー。百貨店が言わはるねん」と言いながら、悪気もなく、市場で買ってきた米を自分の袋に詰めているおばあちゃんを見たときの話です。

大抵のスーパーなどの小売店は、その供給量を確保するために市場などで仕入れをしています。しかし、こだわりの野菜を扱っている販売店は、その安定した供給を生産者に直接要望する。大口の顧客を失うことが怖い生産者にとって、この要望がプレッシャーになって、おばあちゃんが市場から買ってきたものを自分の袋に詰めしてしまう冒頭の現場を生み出しているというのです。

これは、野菜やお米など、農産物は生き物であり、不安定な供給にもなるという前提を受け入れていない息苦しさから来るものだと小野氏は言います。たとえ仕組化された認証マークがあっても、生産者側と販売側の前提のずれがこうした現場を生み出してしまうのです。

 

この話には、認証マークの貼付を義務付けてくる百貨店と交渉を繰り返してきた池内さんも拍手を交えて共感していました。「結局、自分たちに見る目が無いから認証に頼る。最終的に恥をかくのは、百貨店などのバイヤーですよ」と言います。

二人の話の背景には、大量生産・大量消費が当たり前となってしまった供給側の論理の中で、消費者にとっての安全や安心を担保するという責任を生産者や認証マークに依存してしまっている現状がある。安心・安全を担保するために重要なのは、消費者側や販売側に作り手側との信頼を築くことなのかもしれません。

 

③お客様と共に築いてきたブランド

スタッフの育成、取材時の苦労、毎月の支払いなど、これまで二人が事業を続けて来た中で経験してきた苦労話へと話題は移ります。その中でも話の中心は、二社が、いかにお客様と対話をし続け、今のブランドを築いてきたのか、そして、そこにどんな困難と嬉しさがあったのかという話に向かっていきました。

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「店舗を持たないメーカーにとって、お客様からのご意見やお叱りが一番お客様とコミュニケーションを取れる機会」(池内)

IKEUCHIのタオルは決して安価ではありません。だからこそ池内氏には、商品を使ってもらってファンになるのではなく、ファンになってくれないと購入してくれないという意識があるそうです。

ある時、IKEUCHI ORGANICでは、お客様からお叱りを頂いたことがあったと言います。この時、池内氏は、返品してもらった商品を全て新品に 取替え、その上で返品して頂いた商品を修理しお客様へお返ししました。

なぜなら、お客様が一年使ったタオルには、その1年の想い入れがあるからだ。そのため、返品された商品を一品一品縫い直して、補修してからお客様の元へ返品したそうです。一見非効率的にも見えるものの、この時対応した顧客が、今のIKEUCHI ORGANICの最初のファンだと言います。池内氏は、当時販売店を持っていなかったIKEUCHI ORAGANICにとって、お客様からの提案こそがお客様の声を聞く一番の機会だったと振り返ります。東京、福岡、そして京都と販売店ができた今でも、全ての一般消費者からの提案や問い合わせには、池内氏が全て目を通し、直にお客様からの声を聴いているそうです。

本当に良いモノは、長く使ってもらうことによって愛着が湧き、ファンになってもらえる。IKEUCHI ORAGANICは、このことをお客様に理解してもらえるよう言い続けてきたのです。

 

「都会育ちで季節を感じることが無かった子供が、野菜を食べて季節感を口にするようになった」(小野)

長く使ってみないとブランドへの愛着が持てない。それは坂ノ途中にも共通する考えのようです。

基本的に野菜は、季節によって味や形状が異なる。たとえ味や品質には問題が無くとも、時期によっては、トマトの皮が固いこともあるし、葉っぱが黄色いこともある。しかし、この野菜の季節の一瞬の美味しさや違いに気づくのは時間がかかる。

だから、坂ノ途中では、この一つ一つの野菜の説明を大事にしていると小野氏は説明します。例えば、定期宅配で梱包される野菜の状態によっては、なぜ皮が固いのか、葉っぱが黄色いのかといった野菜特有の季節の事情が丁寧に説明された、スタッフによる「お野菜コメント」が添えられるそうです。

とはいえ、坂ノ途中で扱っている野菜は年間約300種類、同じ野菜でも作っている農家は平均5~8件あるので、数えきれないくらいの野菜の特徴を一つ一つ説明するのは、決して簡単ではありません。それでも、都会で育ち季節感を感じることができなかった子どもが、季節の野菜を食べて「今年もこの季節が来た」なんて言葉を発するようになった、といったお客様の声を聞けるのが嬉しいと話していました。

 

お二人の対談から、それぞれが抱く商品のこだわりを、消費者に伝えることが簡単ではなかったことが良くわかります。だからこそ、それぞれの野菜やタオルへの想いを、消費者に対して、地道に、そして丁寧なコミュニケーションによって、今の二社のブランドが築かれてきたこともよくわかります。

 

◆最後に

このトークセッションでは、本当に良いモノを多くの人に知ってもらいたい、そんなお二人のシンプルで強い想いを感じることができました。そのために、既存の業界と闘い、消費者と地道に丁寧にコミュニケーションを取ってきた話が凝縮された90分間でした。

お二人が目指す持続可能な社会というテーマに、必ず紐づいてくるのが「社会的責任」という言葉です。簡潔にいえば、企業であろうが行政であろうが、一人ひとりが将来の社会に対して責任感を持とうという意味になると思います。もちろん大事な掛け声である一方、この漠然とした「社会」に対する「責任」と言われても、どこにどんな当事者意識を持てば良いのかわからない、そんな難しさや戸惑いを感じることも多いのではないでしょうか。

お二人の話を聞いていると、自分なりの役割を決めることが結果的に持続可能な社会につながるということを感じました。坂ノ途中であれば、新規就農者が作る美味しい野菜を多くの人に届けるお手伝いをすること。IKEUCHI ORAGANICでは、60年前から自社で作り続けてきたタオルを、赤ちゃんであろうが大人であろうが誰もが気持ち良いと感じるモノにしていくこと。

当たり前かもしれませんが、それぞれの分野や商品・モノに関する専門性(プロフェッショナリティ)を高めることで、自ずと社会に対する当事者性を醸成していく。それが結果的に持続可能な社会へとつながっていく。そんなことを強く感じさせてくれた90分のトークセッションでした。


    photo:米村 真悟
    米村 真悟
    現在、同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程2回在籍。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程へ進学後、一般社団法人 RCF 復興支援チームへ参画。東日本大震災の復興支援に携わる企業や行政との協働事業の立案・推進に従事。後、同研究科の博士課程へ進学し、公共政策・スポーツ政策を主な専門領域としながら、スポーツによるソーシャルイノベーションについて研究。

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