INTERVIEW
May 27.2016

「県庁そろそろクビですか?」著者、佐賀県庁円城寺雄介氏に伺うソーシャルイノベーションとは?

「県庁そろそろクビですか?」著者、佐賀県庁円城寺雄介氏に伺うソーシャルイノベーションとは?

平成28年8月27日(土)に開催します「ソーシャル・イノベーション・サ ミット2016」。
今回は、「人を巻き込む「モテる」公務員と共に未来を創る!」をテーマに、全 国で多様な人々を巻き込みながらソーシャル・イノベーションを巻き起こしてお られる公務員の皆さんをお招きする予定です。
その中で、小学館新書「県庁そろそろクビですか?」で話題奮闘の佐賀県庁円 城寺雄介さんも登壇いただく予定としています。
「県庁そろそろクビですか?」の帯によると、円城寺さんは「県内すべての救 急車にiPadを配備して搬送時間短縮に国内で初めて成功、医師と協力しての ドクターヘリ導入など、著しい成果を上げた今も歩みを止めない」と紹介されて います。
いったい、どんな方なのか。ワクワクしながら佐賀県を訪問しました。

「普通の公務員」であることの強み

仲筋:ソーシャル・イノベーション・サミット2016への登壇を快諾いただきまし て、ありがとうございます!

円城寺:いえいえ!講演会などがんばっている人たちのお役にたてる機会をいた だいたときには、全力で対応させていただいているんですよ。ですが、今回のご 依頼をいただいて、本音を言うと、最初は「モテる」公務員というフレーズに違 和感があったので僕はお役に立てないかと思いお断りさせていただこうかと思っ ていました。昨今、いわゆる「スーパー公務員」を持ち上げる風潮があるのです が、私はちょっと懐疑的です。
でも先ほど、仲筋さんから「市民や企業などの皆さんから必要とされる公務員 を増やし、共に行動を起こしていくきっかけを作りたいんです!」という「モテ る」にこめられた熱い思いをお聞きしたので、ぜひ喜んで!と考えを変えまし た。ちなみにこのインタビュー記事ではカットされてると思いますが、ここまで 仲筋さんの方が熱い思いを僕よりも長い時間語っていますからね・・(苦笑)

仲筋:「モテる」というフレーズに引っかかりがあったのですね。

円城寺:はい。私をご覧いただいたらお分かりいただけると思いますが、普通の 公務員でしょ?
本(「県庁そろそろクビですか?」)に私の経歴を書きましたけれど、ごく普通 のキャリアコースで、特別なキャリアを歩んでいるわけではありません。大切な のは、自分が普通の公務員であるから、その他の普通の公務員の気持ちが分かる ということです。

仲筋:普通の公務員の気持ちが分かる?

円城寺:そうです。行政に限らず、企業やNPOなど、どんな組織でも同じだと 思いますが、働いている現場の人の意思を無視して「とにかくやれ!」と言われ ると、「頑張って働こう」とは思えないですよね。ドクターヘリの導入にして も、現場の人が「必要だ」と共感してもらう必要がある。「命令よりも共感」が 必要だと思います。

 

歴史から学ぶ

仲筋:いわゆる「スーパー公務員」のイメージとしては、既存の制度やシステ ム、価値観をガラッとゼロベースで変えてしまう、というイメージがありますね。

円城寺:確かに。でもそこで気をつけなければならないのは、どんな制度やシス テムにも、それが出来上がってきたプロセス、つまり先人たちが苦労して試行錯 誤を重ねてきた歴史がある、ということです。前例や根拠を過度に重視する必要 はないと思いますが、やはり「なぜ、この制度ができたのか」、「この法令の趣 旨は何か」をしっかりと把握すべきだと思います。

仲筋:我々も「企業の経営理念」を大切にすべきだと考えて事業を推進しています。

円城寺:時代や時流に合致し、県民の皆さんが望んでおられる事業を展開するこ とは非常に大切です。そのためには、制度や法令の「趣旨」をしっかりと押さえ る。その上で制度や法令を改善していくことが重要だと思います。何でもかんで もゼロベース、にしないほうがいい。
変えることは単なる手段であって目的ではないのです。

仲筋:そのようなお考えは、どのようなバックグラウンドから育まれたのですか。

円城寺:実は、歴史が大好きでして、大学には歴史を学びに行こうと考えていま した。けれども、親から「お金にも仕事にもならないような歴史学者になりたけ れば、自分で学費を稼ぎなさい」と言われ、断念しました。生活費はバイトして 稼ぐつもりでしたが高校生に入学金を今すぐ用意するのは不可能でしたから。兵 糧攻め、兵站(補給)を断たれたわけです(苦笑)

仲筋:どんな歴史がお好きなのですか?

円城寺:戦国時代から近代戦争まで、戦争の歴史に興味があります。戦乱や混乱 の時代はそのひとつひとつの判断や行動がとても勉強になりますし、自分だった らどうするか、どう行動するかを考えるまさに「人生の教科書」だと思います。 判断を誤れば命を落とすことにもつながりますし、平和な時代にはあまり考える ことのない「人はどう生きるべきか」ということもすごく考えさせられます。
なによりも戦を学べば戦をしなくていい方法も学ぶことができますからね(笑)

現場

仲筋:著書(「県庁そろそろクビですか?」)を拝読していますと、医療現場の 方々の考えを熱心に探ろうとされていますね。

円城寺:私の最初の現場は土木事務所で、いわゆる現場だったのが良かったと思 います。現場でどのようなことが起こっているのか、県民の皆さんはどのような サービスを望んでおられるのかといったことを学ぶ良い機会になりました。です から、何か新しい制度や仕組みを作る場合も、「現場の人々が便利になって暮ら しやすくなるか?」を考えるようにしています。
例えば、救急医療でのiPad活用も現場の人たちが使い易くなるように工夫 をしました。面倒な設定はすべてこちらでやっておいて、すぐに使えるようにす る、破損する不安があるなら保険をかけておくなど。なによりも使いたくない人 には強要しない、使いたい人が便利に使ってもらい、それをみた周りの人たちが 「おっ?なにこれ。自分たちも使いたい!」と思ってくれるような仕組みにしま した。

何のための「安定」か?

円城寺:公務員は簡単には解雇されませんし、身分は安定していると思います。 大切なことは、公務員の身分が安定している理由は何なのか、と考えることです。

仲筋:行政学などでは、猟官制(選挙の度に公務員を変更するなど、公職の任命 を政治的背景に基づいて行うこと)の弊害を防ぐためと教えられました。

円城寺:私は、自分個人にとっては例えマイナスなことでも社会にとってプラス になるならば安心してチャレンジできるように、公務員は身分が保証されている のだと考えています。公権力を自分のために悪用することなく、住民の皆さんが 望んでおられる社会や未来を実現するために使い、進んで社会をより良く変える ための挑戦ができる。いわば公利のための挑戦です。
それを私利を優先してチャレンジしないのでは本末転倒だと思います。世の中の ために良い仕事をして欲しい、という願いがこめられた制度だと思うんです。

仲筋:なるほど、身分が保証されているから公のためにチャレンジする、です ね。共感できます。
それでは、8月27日(土)に開催します「ソーシャル・イノベーション・サ ミット2016」へのご参加、宜しくお願いします。

円城寺:京都の大学で学びましたので、ちょくちょく京都を訪問しています。京 都で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

仲筋:それでは、これからも色々なことに挑戦してください!

円城寺:いやいや、「一緒に挑戦しましょう!」でしょ!

仲筋:そうですね!一緒に挑戦しましょう!

・・・・・・

公務員のこれからを真剣に考える円城寺さん。素晴らしいバランス感覚の持ち主 でした。インタビューの合間には、新しい賑わいづくりプロジェクト「わいわ い!!コンテナ」、佐賀県の老舗百貨店で提供されている「白いイチゴ」やB級 グルメ「シシリアン・ライス」なども御紹介いただき、円城寺さんの佐賀県に対 する並々ならぬ愛情も感じました。
皆さん、小学館新書「県庁そろそろクビですか?」をご一読ください。そして、 「ソーシャル・イノベーション・サミット2016」で円城寺さんと語り合いましょ う!(※小学館新書「県庁そろそろクビですか?」の印税などは、全て佐賀県の ために役立てられます。)

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わいわい!コンテナ

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佐賀県庁

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佐賀県のソウルフード シシリアン・ライス

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photo:仲筋裕則
仲筋裕則
京都市産業観光局商工部中小企業振興課 ソーシャル・イノベーション創出支援係長。2012年から京都市ソーシャルビジネス支援事業を担当。 ビジネスを活用して社会的課題の解決に取り組む「ソーシャルビジネス」の認知度向上と 企業育成のための支援に取り組み、京都から日本の未来を切り拓く様々な活動を行う。

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