INTERVIEW
October 10.2016

関わる全ての人とオーガニックな関係をつくる。最大限の安全と最小限の環境負荷を追求するテキスタイルカンパニー「IKEUCHI ORGANIC 株式会社」【これからの1000年を紡ぐ企業】

関わる全ての人とオーガニックな関係をつくる。最大限の安全と最小限の環境負荷を追求するテキスタイルカンパニー「IKEUCHI ORGANIC 株式会社」【これからの1000年を紡ぐ企業】

オーガニックという言葉に、あなたはどんなイメージを持っていますか?

辞書でオーガニックを引くと、「有機体の」「有機の」「化学肥料を用いないで育てた」「有機肥料を用いた」などと書かれています。

日本でも環境問題や、安心・安全な食べ物への関心の高まりを受けて、オーガニックな食品や製品を暮らしに取り入れる人が増加傾向にある一方で、「興味がない」という人や、「健康志向の特別な人たちが好む値段の高いもの」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、そのオーガニックを社名に掲げ、ビジネスを行っているオーガニックトータルテキスタイルカンパニー「IKEUCHI ORGANIC株式会社」(以下、IKEUCHI ORGANIC)の代表、池内計司さんに“オーガニックなものづくり“や“オーガニックな会社”についてなど、さまざまなお話を伺ってきました。

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お話を伺った池内代表

「最大限の安全と最小限の環境負荷」を追求

「IKEUCHI ORGANIC」は、メイン商材であるタオルをはじめ、マフラー、ベッドリネン、インテリアファブリック、アパレル素材などのオーガニックテキスタイルを企画・製造・販売している企業です。

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KYOTO STORE / 京都ストア

その最大の特徴は、「最大限の安全と最小限の環境負荷」というぶれないコンセプトによるものづくり。このコンセプトを追求するため、「IKEUCHI ORGANIC」は、「そこまでするか!」という大小さまざまな取り組みを行っています。その中でも代表的なものをいくつかご紹介したいと思います。

使用するコットンはすべて、人と自然に誠実なオーガニックコットン

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みなさんは、コットン栽培農家の健康被害が深刻な問題になっていることをご存知でしょうか? 一般のコットンは、世界の畑の中で最も多くの農薬が害虫駆除のために使われている農産物であり、現地の人々は、大量に散布される農薬を吸い込みながらの作業を強いられています。

また、虫に農薬に対する免疫ができていくため、徐々に同じ薬が効かなくなります。その薬が効かなくなると、さらに強い農薬が必要になり、農家の人々は借金をして農薬を買い続けるという負のスパイラルに巻き込まれていくのです。

「IKEUCHI ORGANIC」はこのような一般的なコットンは使用せず、以下の3つの条件をクリアしたオーガニックコットンのみを採用しています。

1つ目は、3年以上農薬や化学肥料を使わない有機栽培で育てられていること。畑の土に残留する農薬が消滅するまでの3年間は、オーガニックと認められません。

2つ目は、遺伝子組換え種子でないこと。より早く、効率的に均質な綿花を大量収穫できるよう遺伝子組換えされた種は、生産ラインから排除されます。

3つ目は、フェアトレードであること。コットンを生産する農家が、安全かつ衛生的な労働環境下にあり、正当な生活賃金が支給されていること、正当な価格で安定的に購入し続けることが条件です。

これらは、畑から紡績工程までを審査対象とするEU基準に基づいてスイスの認証機関「bio.inspecta(バイオインスペクタ)」から審査を受け、オーガニック認証を取得しています。

使用する電力はすべて、風力発電によるグリーンエネルギー

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「IKEUCHI ORGANIC」は、再生可能エネルギーの普及によって気候変動問題解決に貢献することを目指し、「日本自然エネルギー株式会社」を通じてグリーン電力証書の購入を選択。

オフィスや工場で使用する電力はすべて、秋田に吹く風によってつくられており、国連グローバル・コンパクトに認められた環境ラベルのひとつである「WindMade(ウィンドメイド)」認定基準もクリアしています。

人体に安全で環境負荷の少ない「ローインパクトダイ」で染色

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タオルの色落ちを防ぐため、糸の段階で行われる漂白工程に、今治の染色工場である大和染工が開発した新たな技術「オゾン漂白」を採用し、薬品の使用を30~50%削減。

また、染色には重金属を含まない反応染料を使用し、石鎚山系の地下水で洗浄。タオルに残った染料は濃い色目であれば5時間以上かけて丹念に洗い落とされ、その廃水は世界一厳しいとされる瀬戸内海の廃水基準をクリアする浄化施設で、バクテリアを使って長時間かけて処理しています。

すべての製品で、安全基準「エコテックス規格100」のクラス1を取得

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「エコテックス規格100」は、有害物質の影響をなくすことを目的とした、繊維の全加工段階における世界的に統一された試験・認証システムです。「IKEUCHI ORGANIC」の製品はすべて、最も基準が厳しいクラス1をクリア。その安全性は「赤ちゃんが口に含んでも安全」と表現されています。

安全性と環境性のデータをすべて公開

「IKEUCHI ORGANIC」は、原材料の調達から最終製品に至るまでの安全性と環境性のデータを全て公開しています(データはこちらからダウンロードできます)

オーガニックのあるべき姿との出会い

「IKEUCHI ORGANIC」は、1953年に「池内タオル工場」として創業し輸出専用工場として生産を開始。1969年に「池内タオル株式会社」(以下、池内タオル)を設立し、ドイツをはじめとしたヨーロッパ市場を中心にビジネスを展開していました。

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そして、池内さんが「池内タオル」の代表取締役社長に就任したのが1983年。家業を継ぐため、勤めていた松下電器産業の退職に向けて引き継ぎを進めている最中に先代が亡くなられ、いきなり社長に就任せざるを得ない状況だったといいます。

池内さん:本当に突然の出来事で、とにかく、タオルのプロフェッショナルにならなきゃいけない。それをどれだけ短期間でできるかが重要でした。

でも、タオルの設計ってとても大変なんです。当時だと、工場長に設計を依頼して半日、その手直しに半日かかるという世界でした。それをいくつもやるとなると、とても時間のかかる作業だったんです。

時代はまだ、ワープロが世の中に出回り始めたばかりの頃。コンピューターは大きな会社のものだったにもかかわらず、池内さんはタオル設計ソフトの発注を決断します。

池内さん:つくりたいものをつくるためには、どうしてもそれが必要だったんです。その設計マシンで何百というシミュレーションを行ったことで、何十年かかるような技術を、部分的にですが、数年で身につけることができました。

その後も毎年のように、日本初または業界初の、当時の最新鋭の織機を導入するなど、他社に先駆けて新たなチャレンジを仕掛けてきた「池内タオル」に、その後を左右する大きな転機が訪れました。それが1999年の自社ブランドの設立です。

1999年は、広島と今治を結ぶしまなみ海道が開通した年。「四国タオル工業組合」の販売責任者を兼務していた池内さんは、しまなみ海道を使ってやってくる観光客にタオルを販売していくために、組合各社に対して自社ブランドの設立を提案。

というのも、今治タオル業界全体の仕事はデザイナーズブランドのOEMのため、販売権がなく、自ら売ることができなかったそう。そして組合の旗振り役だった「池内タオル」は、自社ブランド「IKT」を設立します。

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池内さん:うち以外、数社しかやらなかったですけどね(笑)。確かにファクトリーブランドを受け入れる素地は、世間にはありませんでした。でも僕はなんだかんだやってしまった。それが今日につながっているわけですが…。

そして「IKT」設立と同時期に本格的に取り組み始めたのが“オーガニック”でした。きっかけは、世界で初めてオーガニック製品をつくった、デンマークのニットブランド「ノボテックス」社のノルガード前社長との出会いにありました。

池内さん:1996年ごろ、彼が視察に乗り込んできたんです。その時に「環境マネジメントシステムの『ISO14001』がリリースされるから、もう少し環境について勉強したらいいんじゃないか?」とアドバイスをもらいました。

後日、「ISO14001」を取得し、そのことを彼に伝えたら、彼らがもっている染色技術「ローインパクトダイ」のノウハウを教えてもらえることになったんです。それがなかったら、今の色付きのオーガニックタオルは存在していません。そして、その時に彼から、“オーガニックのあるべき姿”を教わりました。

“オーガニックのあるべき姿”とは、具体的にどのようなことなのでしょうか?

池内さん:例えば「化学薬品を一切使わないから安全だ」というタオルが世の中にはあります。しかし化学薬品を使わないとそもそも糸はつくれません。一切化学薬品の使われないタオルなんて存在できないんですよ。

にも関わらず「一切使わない」と表現するのは、作り手が、化学薬品が使われていることを把握していないか、意図的に嘘をついているかのどちらかです。どちらにしても怖いですよね。

「ローインパクトダイ」は、化学薬品をきちんとコントロールすることで環境負荷を最小限にとどめるという、リアリティのある考え方なのです。

もう一社、「IKEUCHI ORAGANIC」を語る上で欠かせない企業があります。それが、原材料であるオーガニックコットンの供給を担っている、スイスの「REMEI(リーメイ)」社です。

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「尊敬の念を持って人と自然に対峙することが、持続可能な経済的成功への鍵である」というメッセージを掲げる同社が、貧困状態にある農村の人々の自立のためにインドとタンザニアで進めている、「bioRe」プロジェクトの認証オーガニックコットンが最も信頼できると池内さんは判断し、採用を決めたそうです。

池内さん:「REMEI」は、1983年ごろ綿花貿易商としてビジネスをスタートさせるのですが、綿花栽培の劣悪な状況を知っていくうちに、自分たちでつくらなきゃいけないとなって、タンザニアでオーガニックの綿花畑をつくり始めるんですね。

そして、綿花農家をどんどんオーガニックに転換させていった。その姿勢にどんどんスポンサーがついて拡大していったような企業です。

売り上げ数十億円規模の会社ですが、彼らのCSRはすごいですよ。例えば、彼らはインドで小学校をつくっています。校舎を贈るみたいなことは日本の企業でもやっていたりしますが、彼らの場合、先生も送り込み、教科書も提供し、5年間運営をサポートするんです。

なぜ5年かというと、インドではその学校が5年間運営されると、公立学校になれるからなんです。サポートしたところがきちんと回るところまで支援していく。そういう姿勢にはいつも感動させられています。「池内も小学校をつくらない?」と言われて、さすがに即答しかねているのですが(笑)

こうして、さまざまな出会いを経て、オーガニックであることを追求していくほどにピュアになっていく「池内タオル」に、企業文化をわかりやすいメッセージで発信し存在価値を高める「CI(コーポレートアイデンティティ)」を担当していたナガオカケンメイさんが、「池内のオーガニックは、通常のオーガニックの考え方と違う。社名をIKEIUCHI ORGANICにしよう」と、社名変更を提案します。

これに対し、池内さんは二つ返事で「よしいこう」と決断。こうして2014年、「IKEUCHI ORGANIC株式会社」が誕生したのです。

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池内さん:社名にオーガニックを掲げたのには2つの意味があります。1つは、オーガニックしかやりませんということ。もう1つは、タオル以外もやりますという意味です。だから、タオルではなくテキスタイルにした。僕らがもっているオーガニックのノウハウを横に広げていくぞ、という意志の表れなのです。

目指すのは“オーガニックな会社”

ちょうど60周年の年に社名を変更した池内さんは、さらに60年後、120周年を迎える年までに「赤ちゃんが食べられるタオルをつくる」と、アメリカのプレス向けに、高らかに宣言しました。

池内さん:60年をかけて、私たちは「赤ちゃんが口に含んでも大丈夫」であるところまで、タオルの安全性を高めることができました。次は食べられるところまで、さらに安全性を追求していきたいと考えています。

この、一見冗談かと思うような話ですが、池内さんは大真面目です。その第一歩として、2015年12月に、食品衛生管理手法をもとに、消費者への安全な食品提供を可能にする食品安全マネジメントシステム(FSMS)の国際規格である「ISO22000」を、業界で初めて取得。

企業としてさらにピュアになるために、トレーサビリティ(綿の栽培から、加工・製造・流通などの過程)をデータ化して開示していきたいと考え、ソフト開発に着手し始めています。「いずれオーガニックの器もつくりますよ」と話す池内さん。そうしてどんどんオーガニックを追求していくことで、「IKEUCHI ORGANIC」は、名実ともに“オーガニックな会社”になることを目指しているのです。

池内さん:私の考える“オーガニックな会社”とは、綿花を栽培している農家の人たち、糸を紡ぐ業者の人たち、テキスタイルにする私たち、染色してくれる業者の人たち、販売してくれる流通の人たち、製品を購入してくれるエンドユーザー、経営を支えてくれる金融・投資家の人たち、みんなが気持ちのいい関係の会社です。そこを目指しましょうと、社員には話しています。

そして、最後に「IKEUCHI ORGANIC」の特徴である「最大限の安全と最小限の環境負荷」が商品特徴にならない世界をつくりたいと、会社としての大きな夢を語ってくれました。

インタビューをしながらとても印象的だったのは、オーガニックを追求していくと、自然と出会うべき人と出会い、自然とピュアになっていくということ。そのピュアな人たちが集まり、糸のように紡がれた先に、今の「IKEUCHI ORGANIC」があるのだと感じました。

「IKEUCHI ORGANIC」の商品は全て、店頭で手触り・風合いを体験できるようになっています。まだ体験したことのない方は、店頭で自分好みのタオルを探してみてはいかがでしょうか?

 

インタビュアー:赤司 研介(京都市ソーシャルイノベーション研究所 エディター/ライター)

 

■企業情報

IKEUCHI ORGANIC 株式会社

本社|〒794-0084 愛媛県今治市延喜甲762番地

TEL 0898-31-2255

京都STORE|〒601-8311 京都府京都市中京区富小路通三条上る福長町101番地 SACRA ANNEX 1F

TEL 075-251-1017

URL|http://www.ikeuchi.org/

 


    photo:池内 計司(いけうち けいし)
    池内 計司(いけうち けいし)
    1949年、愛媛県今治市生まれ。1971年、松下電器産業(現パナソニック)に入社。1983年、家業を継いで池内タオルに入社、1983年、2代目社長に就任。風力発電100%による工場稼動や業界初のISO14001認定を経て、1999年に立ち上げた自社ブランド「IKT」は、日本のみならず欧米でも高く評価され、2002年には「ニューヨーク・ホームテキスタイルショー・2002スプリング」で、日本企業として初めて最優秀賞を受賞。環境とビジネスを両立する企業として注目されている。

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