働き方改革
Jan 17.2019

創意工夫で活力溢れる組織の実現を│オムロン京都太陽スタディツアーレポート

障がい者と健常者が共に働く工場運営を実現し、障がい者雇用のノウハウを積極的に社会に提供されているオムロン京都太陽株式会社さん。その現場では整理整頓のための小さな工夫から生産性向上のための仕組み作りまで、毎年1万件以上の改善が行われているそうです。

更に、様々な障がいのある人が作業をしやすくするための道具や機械を、障がい者の方も自ら参加し、設計・製造しています。記憶や判断がしづらい知的障がい者の方が作業するための色や音によるガイド、片手のみでしか作業ができない方のために作業を分担した製造ラインなど、工場の中には作業する方一人ひとりの力を最大限発揮するための工夫が満載でした。

創意工夫で活力溢れる組織の実現を│オムロン京都太陽スタディツアーレポート

オムロン株式会社 と 社会福祉法人太陽の家 の共同出資会社として1972年に大分県に設立された、オムロン太陽株式会社。まだCSRという言葉が世に存在せず、障がい者が働いて自立した生活を送ることなどあり得ないと考えられていた時代に、障がい者を中心に雇用する会社の設立は世界初の試みでした。さらに、オムロン太陽株式会社を訪問し、感銘を受けた京都府知事から、オムロン本社のある京都にも是非、障がい者雇用の場をと誘致され、1985年、京都にオムロン京都太陽株式会社が設立されました。

その後も障がい者の雇用を増やしながら、利益を出し、事業を継続させるべく創意工夫が重ねられた工場。そこには、私たち健常者が働き方改革や業務改善を考える上でのヒントがたくさんありました。

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自分たちで道具を設計し作り上げる。

工場の中には、多種多様な作業補助の機械があります。その中には、障がい者が自ら考え、設計して作ったものや市販の商品を組み合わせて作ったものもたくさんあります。これまでに社内で作った道具や機械は350点を超えており、その用途は大きく2種類に分かれます。

○手元化…作業に必要な身体動作を減らす

ビニル袋を1枚ずつ取り出し、口を開く機械 → 手が不自由な人でも、残った身体機能だけで梱包作業に就くことができるようになります。

段ボールを1枚ずつ作業者の手元に送り出す機械 → 遠くの物を取るのが困難な作業者でも、効率的に箱詰めできるようになります。

○スキルレス化…判断や記憶を補助する

部品の必要順に合わせて部品ケースが光る機械 → ガイドに沿って部品を取ることで、間違いなく必要部品をそろえることができます。

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こうしたアイディアは無意識に問題を解決してしまう健常者が働く現場ではなかなか出てきづらいのですが、これらの機械は健常者が使っても効率化や作業負担の軽減につながります。

また、事業継続のためには、作業に関する工夫だけでなく障がい者やご家族が安心できる職場環境を整えることも大切です。工場の各フロアには障がい者の健康面をサポートするスタッフが常駐しており、作業の進み具合や表情などから小さな変化からも必要性を判断し、サポートを行うそうです。

3Sを徹底。整理・整頓・清掃のための工夫が満載

多品種少量生産のものづくりをされているオムロン京都太陽さんは、短納期・高品質なものづくりをするため、3S「整理」「整頓」「清掃」を徹底して行なっています。参加者から歓声が上がったのが、こちらの資料のラベルでした。背表紙の写真で直感的にしまう位置が分かるという優れもの。「うちもこれやった方がいいわ」という声も。

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次に説明していただいたのが、この通路と作業スペースの区分やモノを運ぶルートを示す床のライン。一本線ではなく点線にしているのは、いったいなぜでしょうか。

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これも3Sのために考案された工夫です。通路にはよく通る場所、どうしても汚れやすい場所があります。一本線の場合は、一部分が汚れた場合でも端から端まで、すべて貼り換える作業が必要になります。点線の場合は、最初に貼る時は少々手間がかかりますが、一部分が汚れたときにその部分のみ貼り換えで対応が可能なので貼り換え作業が簡単になり、汚れたまま放置することがなくなったそうです。

工場のいたるところにある工夫は、ほとんどが従業員のアイディアによるものです。オムロン京都太陽さんでは、どんな小さなことでもいいから一人ひとりが改善テーマを実行することを大切にされています。実際に毎年1万件以上の改善テーマを実行しており、これを1人あたりに換算すると年70件以上。この数字には驚きました。

「ほとんどは物の置き方とか、本当に小さなことです。でも“1人の100歩より、100人の1歩”という考え方で、小さなことでも必ず評価するようにしています。」

宮地社長がお話してくださったこの言葉が、とても素敵だなと思いました。

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年1万件の改善案を実行できる組織になるには

質疑応答の時間には、参加者の皆さんから

「毎月改善案を出し続けるのはしんどくないですか?」
「従業員に改善案を出してもらうためにどんな取組をしていますか?」
「日々の改善については、どのように評価をしていますか?」

という声が多数ありました。オムロン京都太陽さんでも、改善テーマの実行が定着するまでには様々な取組をされてきたそうです。

「最初はやはりなかなか現場から改善案が出なくて、まずは管理職が率先して実践するところから始めました。自分たちが本気を見せないと皆も動いてくれないと考え、社長も含めて全員がチームに入り、毎月報告会に参加してアイディアを出し、清掃も一緒にしています。チームで競い合いながら取り組んでいるので、個人に負担がかかりすぎることはないようです。評価については、都度の金銭的な報酬はありませんが、年に一度発表会にてチーム単位での表彰を行い、優秀チームには寸志が提供されます。また、どんな改善テーマも『素晴らしいね』と褒めることを大切にしています。」

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障がい者も健常者も、成長・改善するために自分たちで工夫をし続ける。そうした風土を育むために行ってきたことをお話しいただきました。働き方改革に取り組む皆さんにとっても私たちSILKメンバーにとっても大きな刺激になりました。ありがとうございました!

協力:オムロン京都太陽株式会社
https://www.kyoto-taiyo.omron.co.jp/
写真・文:柴田明(SILK)


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